シアタートラムにて『チック』初日を観劇させて頂きました。
シアタートラム特有の高い天井、そして灰色の石壁はそのままに、沢山の小道具や家具が散りばめられて置いてあります。
そして、真ん中には大きな四角い台と空中に浮いてる四角い天板。そして、満員のお客様。。不思議なんですが、舞台との距離感の近さを始まる前から感じていました。なんでだろう???舞台装置の感じもあるのかな??
いやはや私のその謎の感覚は置いておいて(笑)
絵本のようにキュート!
観終わってまず思ったのが、なんだか絵本のようなキュートな感じ。誰かのオモチャ箱を覗いたような…
けど、物語に流れるものは、貧富の差とか、DVとか、アルコール中毒とか、夫婦の不仲とか、家族問題とか、社会に取り巻く全ての問題が、透けてみえたり、表にドンとみえたり。
そんな甘い話ではないんです。なのに、どこか爽やかな清涼感さえ感じるんです。
世田谷パブリックシアター『チック』奥:篠山輝信 手前 左から:柄本時生 あめくみちこ/撮影:細野晋司
少年2人の思い出の夏には、狂気と切なさがつまってる……
14歳の冴えない少年マイクは喧嘩ばかりの両親と、退屈な学校生活の毎日に出口のないような息苦しさを感じていた。だがある日そんな生活を一変させる出会いが彼に訪れた。それは転校生のチックだ。彼はロシアからの移民で、風変りで問題児。チックは突然マイクの家を訪ねてくる。「乗れよ」チックが盗み出したオンボロなラーダ・ニーヴァに乗り込み2人はひと夏の旅に出る。
これまで見えていた世界とは全く違う新しい景色と、新しい出会いが彼らを待っていた!
学生時代の一夏の思い出が甦る
本邦初演となる今回の作品「チック」
今夏に上演してくれたことに、観客としてとても感謝したいです。
きっと誰にでもある学生時代の一夏の思い出。思い出したくないことまで思い出したりして(笑) 観劇しながら頭と心は実に忙しかったです。
今作品は、世界中で愛されている児童文学書「Tschick」(邦題「14歳、ぼくらの疾走:チックとマイク」作:ヴォルフガング・ヘルンドルフ)をドイツにて舞台化したものだそうです。2011年の初演から今もなお上演され続けてるようです。スゴいな~。
けど、なるほどと納得できるほど、どこの国でもどの人が観てもどこか共感できる感覚が散りばめられているように感じます。
この夏だからこそ観て欲しい!!
本当に心からそう思います。
世田谷パブリックシアター『チック』奥 左から:あめくみちこ 土井ケイト 大鷹明良 手前 左から:柄本時生 篠山輝信/撮影:細野晋司
演出は世田谷パブリックシアター初登場でいらっしゃるドイツ・ハンブルク出身の注目の演出家・小山ゆうなさん。
小山さんは今作品の翻訳も務めてらっしゃいます。
そして、14歳の少年マイクを演じるのは篠山輝信さん、同じく14歳の少年チックを演じるのは柄本時生さん。
ドイツでの上演でもそうだったようですが、大人が14歳の少年を演じる。14歳という時代を経験して時間を重ねた人間だからこそ見えてくる様々な視点が舞台上にありました。
というか、これはこの『チック』を創作した全ての大人達の成果だと感じます。
是非!劇場に足を運んで欲しいです。
あぁ、言葉が纏まらないですが、土井ケイトさん、あめくみちこさん、大鷹明良さん。演劇の妙だな。体力使ってたな。。たまらんです。
是非!楽しみに観て欲しいです。
(文:小暮智美)
舞台「チック」
【原作】ヴォルフガング・ヘルンドルフ 【上演台本】ロベルト・コアル【翻訳・演出】小山ゆうな【出演】柄本時生 篠山輝信 土井ケイト あめくみちこ 大鷹明良
2017年8月13日(日)~27日(日)/東京・シアタートラム
公式サイト
舞台「チック」