「トゥモロー!」という歌。どこかで聞いたことがありませんか?
あまり演劇やミュージカルを見ないという方でも、「アニー」という名前、そしてこのメロディーは聞いたことがあるという方は多いのでは、と思います。
1986年から32年続き、総上演回数はなんと1728回。全国で約167万人が笑って泣いた(かもしれない)、まさに国民的ミュージカル「アニー」が今年もやってきました!
演劇プロデュースユニットMoratorium Pantsの橋本昭博が観劇レビューをお届けします。
言わずと知れたミュージカルの名作!
『アニー』が誕生したのは1924年。
「ザ・リトル・オーファン・アニー(小さな孤児アニー)」という漫画として、新聞「ニューヨーク・デイリー・ニューズ」に連載されたのが始まり。
11歳の孤児の女の子を主人公にしたこの物語は大きな反響を呼びました。
逆境にあっても前向きで、明るい彼女のキャラクターは、不況にあえぐ多くの人々の心を掴み、新聞連載は50年以上も継続され、アメリカではじめてミュージカル『アニー』が上演されたのは1976年。
劇中歌『トゥモロー』が大ヒットするなどして、トニー賞でも、作品賞をはじめとする7部門を受賞。ミュージカル史に燦然と輝く名作となりました。
世界各地で繰り返し上演され、ラジオドラマ化、映画化もされ、日本でも昨年公開された映画『ANNIE/アニー』で知ったという方も多いのではないでしょうか?
今年から演出家が変わってさらにパワーアップ!
日本の初演は1986年。演出は篠﨑光正氏。アニーの子役オーディションや、メイキング特番で話題となりました。
15年を経て2001年より当時NYで活躍していたジョエル・ビショッフ氏が演出家に。
そして、2017年・・・つまり今年! 16年ぶりに演出家が変わりました!
演出を手掛けるのは、日本の大作ミュージカルを多数手掛けている、山田和也氏!
新しい演出家のもと、舞台美術や衣装なども一新!パワーアップした新しいアニーが登場です!
舞台は1933年のニューヨーク。世界大恐慌直後の街は、仕事も住む家もない人であふれていました。誰もが希望を失っているなか、11歳の女の子アニーだけは元気いっぱい。11年前、孤児院の前に置き去りにされたというのに、いつか両親が迎えに来ると信じて、逆境にひるむことなく前向きに生きています。
そんなある日、大富豪オリバー・ウォーバックスの秘書グレースに気に入られたアニーは、クリスマスの2週間をウォーバックスのもとで過ごすことに。明るいアニーに孤独な心をなぐさめられたウォーバックスは、アニーを養女にしたいと思うようになります。しかしアニーは、本当の両親と暮らすという夢をあきらめきれません。その強い気持ちに打たれたウォーバックスは、懸賞金をかけて彼女の両親を捜すことにします。
ところが、それを知った孤児院の院長ミス・ハニガンと弟ルースター、その恋人のリリーは、懸賞金目当てに悪だくみを始めて……。アニーの夢はかなうのでしょうか?
スピーディーに世界が変わる演出! オーケストラの生演奏と豪華なセット!
世界大恐慌直後のニューヨーク。逆境の中でもアニーは歌いながら前向きに生きていきます。
孤児院から始まり、寂れた街と人々。夢を追うニューヨークの街や大富豪の家など、アニーが歩いていくたびにスピーディーに世界は変わっていきます。
時代背景を知らなくても見て楽しめる美術に、とにかく豪華できらびやかなセット。そしてそれを活かしたコミカルなダンスに美しいステージング。
アニーを中心に変わっていく大人たちに笑いつつも、オーケストラの生演奏と歌で贈られる名曲に、何度も泣かされました。
なんと言っても、アニーの見所は元気いっぱいの子役だ!
今年も全国から集まった子供達から厳しいオーディションの末に、新しいタイプの違う2人のアニー。そして、12名の孤児役。子供とは思えないくらいのハイレベルなダンスで作品に華を添えてくれるダンスキッズが16名出演しています。
大人顔負けの演技と歌とダンスで、見る者を圧倒させます。未来のスターがたくさん奮闘。
そんな子供たちをしっかりと脇で支えつつも作品の世界を創ってくれるのが個性豊かな大人キャスト。これぞまさにミュージカル!もう、元気いっぱいの子供たちが歌い踊る姿だけで、涙が出てきてしまいます。
「アニー」がお好きな方は、新しくなったアニーに会いに劇場へ。
まだ見たことない方、ミュージカルはちょっと苦手かも、という方も、
是非!一度、この国民的ミュージカルを見てみてください。
きっと、そんなあなたも帰りには
「トゥモロー!」と口ずさんでしまうはずです。
東京は新国立劇場で5月8日まで。
そして、夏には大阪、仙台、名古屋、上田と、ツアーもお楽しみに!
(文:橋本昭博)
ミュージカル「アニー」
アニー(Wキャスト)・・・ 野村 里桜(ノムラ リオ)・会 百花(カイ モモカ)
ウォーバックス・・・藤本 隆宏
ハニガン・・・マルシア
グレース・・・彩乃 かなみ
ルースター・・・青柳 塁斗
リリー・・・山本 紗也加
ルーズベルト大統領・・・園岡 新太郎
2017年4月22日(土)~5月8日(月)/東京・新国立劇場 中劇場
2017年8月10日(木)~15日(火)/大阪・シアター・ドラマシティ
2017年8月19日(土)~20日(日)/宮城・東京エレクトロンホール宮城
2017年8月25日(金)~27日(日)/愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
2017年9月3日(日)/上田・サントミューゼ大ホール
公式サイト
ミュージカル「アニー」