本作品は【歴史ある図書館に立てこもった男と、説得にあたる定年間際の老練刑事】の話。『なるほど、交渉人の話か。上演時間1時間40分、男と老練刑事の心理駆け引きが巧みに行われ、手に汗握る展開の連続か!』と想像を膨らませました。
・・・いけませんね、早とちり。勝村政信さん演じるディッキーが登場するやいなや、「(上着を)脱げ!」と言われてズボンを下ろすんですもの。映画『交渉人』のケヴィン・スペイシーを想像していたのに加藤茶さんが出てきた感じ?イントロダクション読んだら初演は“刑事コロンボでお馴染みのピーター・フォーク”とちゃんと書いてました。(加藤茶=ピーター・フォークという意味じゃないですからね、念のため。)
誰も寄せ付けない鉄壁な男とは真逆の、つい気を許したくなるような家庭のにおいのするディッキー。
片や戸塚祥太さん演じるハリーは、ただの狂った男ではなく、頭のいい男。そうでなくてはサスペンスとしては面白みに欠けますよね。
ハリーの言葉に耳を傾けていると、彼の思考や信念はよく理解できるし、聞けば聞くほどリアリティが生まれてくる。
同時に、あれだけの台詞と知識を憶えて自分の言葉として発する俳優さんて大変な職業だなぁと尊敬しちゃいます。…相手役のディッキーは寝てましたが(笑)
近年映画でも【交渉人】を題材にした作品が増えたことによって、“交渉人=賢くて裏があって全てが計算”という概念が生まれてます。少なくとも自分はそうでした。この作品に関していえば、それを除外して観た方が素直に笑えるし、惹き込まれます!
そしてもう1つ大きな間違いをしました。
この作品のタイトル『ディファイルド』と聞きなれない言葉で流していましたが、これこそが本質です。誰も“交渉人”の話だなんて言ってませんでした(笑)
“ディファイルド―気高く・神聖なものが汚されること”
歴史ある図書館(劇場)にどっぷり浸かって、彼等の呼吸を感じて観劇することをオススメします!
(文:かみざともりひと)
舞台「ディファイルド」
作:LEE KALCHEIM
翻訳:小田島恒志
演出:鈴木勝秀
出演:戸塚祥太 勝村政信
2017年4月5日(水)~5月7日(日)/東京・DDD青山クロスシアター
2017年5月10日(水)~5月12日(金)/大阪・サンケイホールブリーゼ
2017年5月19日(金)~5月20日(土)/福岡・ももちパレス 大ホール