エントレをご覧のみなさま、はじめまして。藤井咲有里と申します。
本年よりこちらにレビューを書かせていただきます。
観劇前のご参考に、また観劇後の意見交流の読み物として、のぞいて頂けましたら幸いでございます。
レビュー第一弾は『手紙』です。
ミュージカル『手紙』(観劇日 1月24日19時~)
再演していただきありがとうございます!
「初演を見逃していたのですが、この度は本当に再演していただきありがとうございます!」そんな気持ちをスタッフ・出演者の方々に心から贈りたい。
そう思う作品だった。
東野圭吾原作『手紙』は 2003 年に出版されて直木賞候補作となり、2006年には映画化もされた著者の代表作の一つで、2016年1月にミュージカル作品として舞台化し、今回あらたに2017年版が誕生した。
弟のために強盗殺人をおかして服役中の兄・剛志と、その弟・直貴が交わす“手紙”が作品の中心となり物語は進んでゆく。
音にのった言葉にパンチ力を感じた!
音楽の力強さよ天晴れ。
こんなに、音にのった言葉にパンチ力を感じたミュージカルは初めてだった。
劇中のナンバーはどれも曲と歌詞自体が持っているパワーが強く、
登場人物の心情を非常によく現していた。だからか、歌っている間に役者の熱量がどんどん高まっていくのが見えたし、その存在感はまるで、音楽を栄養にぐんぐんと曲中に成長していく植物の様だった。
そんな音色が真っ直ぐに、高い消費カロリーで客席に飛ばされてくるものだから、こちらはオープニングからこころをグッとつかまれて堪らない。
レベルの高い勇者に強い武器でバシッバシっと攻められた感じで、物語の中へグッと引き込まれた。
償いは・・・
題材も良かった。
私は、“償う”行為について今まで掘り下げて考えた事はなかったが、今作のお陰で初めてその言葉を脳に筆入れした心地だ。
犯した罪の代償とは、何をしたら払いきれるのだろう。そもそも完済できるものなのか?観ながらずっと考えて、今も考えている。
償う。自分の人生だけでは終わらない程に長い。
観た事によって新たな思考や気づきをもらうと、良い作品に出逢えたと私は思う。人生で考えるテーマをひとつ増やしてもらった、そんな観劇体験だった。
あと、全くの余談。
今回通路側の席だった為、
舞台下に降りて来た役者さんたちが横切った風を、ふんわりと受けたのですが、その時にもの凄く良い匂いがして、わわわわーー!!!!と興奮したのでした。
芝居とは全然関係ないんですけどね、この感動もまた、記憶に深く刻まれた体験となったのでした。
当たりが出たのに、更にオマケまで頂いてしまった心地です。
ありがとうございました。
1幕70分、休憩20分、2幕60分。
『手紙』東京公演は新国立劇場(小劇場)で、2月5日まで。
神戸公演は新神戸オリエンタル劇場で2月11,12日。
ぜひ!
(文:藤井咲有里)
ミュージカル「手紙」
【原作】東野圭吾『手紙』(文春文庫刊)
【脚本・作詞】高橋知伽江
【演出】藤田俊太郎
【作曲・音楽監督・作詞】深沢桂子
【出演】
柳下大、太田基裕(ダブルキャスト)
吉原光夫
藤田玲、加藤良輔、川口竜也、染谷洸太、GOH IRIS WATANABE、五十嵐可絵、和田清香、小此木まり、山本紗也加
2017年1月20日(金)~2月5日(日)/東京・新国立劇場 小劇場
2017年2月11日(土祝)~2月12日(日)/神戸・新神戸オリエンタル劇場