/On7(オンナナ)の尾身美詞です! 今回は、パルコ劇場プロデュース「猟銃」の観劇レビューをお届け致します!
数々の賞を獲得した中谷美紀の舞台「猟銃」が待望の再演!!
2011年の初演で数々の演劇賞を総なめにした「猟銃」は、文豪井上靖氏の小説を完全舞台化。
カナダから演出家フランソワ・ジワール氏を含むスタッフを招き創作し、カナダモントリオールでも絶賛された作品です。
この作品は、三杉穣介の13年間の不倫の恋を、妻みどり、愛人 彩子、愛人の娘 薔子からの3通の手紙を通して浮き彫りにした一人芝居。主演の中谷美紀さんが年代も性格も全く違う3役を90分間、独白で演じられておられます。
初演時には初舞台ながら、紀伊国屋演劇賞個人賞、読売演劇賞優秀女優賞を受賞され話題を呼びました。
5年ぶりの再演で、より深みを増した今作。初日前日の会見では中谷さん自身も「5年の歳月を経て自身も人間的に成長した。役をより掘り下げることが出来たと思う」と語っておられました。
3人を演じ分ける中谷美紀 匂い立つような美しさ!【動画2分】
薄暗い舞台に、浮かび上がる文字、その後ろには銃を構えた男性のシルエット・・
幕開きから美しい舞台空間に心を奪われます。
そして、中谷さんの匂い立つような美しさはため息の出るほど!全ての空間を支配するその美しさ・・・登場した時点で完全に虜になりました。
睡蓮の花の浮かぶ水面で語る、二十歳の娘薔子。
母と叔父の不倫の恋を知り、戸惑い、心乱し、でも冷静さを保とうとしながら水面を歩く姿は、可憐で繊細で、複雑な心境と感情が押し寄せてきます。
状況説明の多い中で、その質感、匂いまでもを創造させてくれます。
役への変貌も舞台上で行われます。薔子の衣裳を脱ぎ真っ赤なドレスに身を包んだ本妻みどりへ。
動きも口調もガラリと変わり、色っぽく、妖艶な妻みどりに変貌を遂げます。
情熱的で激しい感情をぶつけるみどり。体全体からその怒り、悲しみ、苦しみのエネルギーが生々しく溢れます。
ラストの愛人 彩子の独白は絶品
ラストの愛人 彩子の独白は絶品。
中谷さんの持つ、凛とした美しさ、気品、色気を纏い、流れるような美しい所作の中で彩子の内に秘めた想いを吐露していく姿は一瞬たりとも目が離せない印象的なシーンでした。
心の奥底に流れる強い想いを抑制した演技で、彩子をいう悲しい女性を見事なまでに表現されていました。
会見の際、中谷さん自身がこの作品の中で印象的だと語っておられた「あなたは愛することを望むか、愛されることを望むか」という台詞。彩子の想いが迫り、その切なさと苦しさは誰もが感じながら生きているものだ・・・と人間の本質を感じさせられ胸に刺さりました。
また、三杉穣介役であるフィジカルアクターのロドリーグ・プロトー氏との言葉の交わさないやり取りが、演技に多大な化学反応をもたらしています。再演に当たり、二人が対面で芝居をするという形の稽古にこだわったという、その綿密で繊細なキャッチボールにも注目です。
そして、国境を越えた装置、照明、音響などの巧みなスタッフワークは「日本の美」を浮き彫りにしたい、というビジョンを元に創作され、その洗練された美しさは舞台に多大なる効果をもたらしていました。
まさに、万華鏡のように女の愛憎、業、情が交錯する今作。
カナダと日本の国境を越えた才能が再び集結し、より深みの増した「猟銃」は、4月24日(日)まで渋谷パルコ劇場にて。その後、新潟、京都、豊橋、兵庫、北九州でも上演されます。
どうぞお見逃しなく!
詳しくは公式サイトで。
舞台「猟銃」 公式サイト
(文:尾身美詞 撮影・編集:森脇孝/エントレ)
公演情報
舞台「猟銃」
【原作】井上 靖 『猟銃』
【翻案】セルジュ・ラモット
【日本語監修】鴨下信一
【演出】フランソワ・ジラール
【出演】
中谷美紀
ロドリーグ・プロトー
2016年4月2日 (土) ~2016年4月24日 (日) /東京・パルコ劇場
2016年5月4日(水・祝)/新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
2016年5月7日 (土) ~2016年5月9日 (月) /京都・ロームシアター京都 サウスホール
2016年5月14日 (土) ~2016年5月15日 (日) /愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2016年5月21日 (土) ~2016年5月22日 (日) /兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2016年5月27日 (金) ~2016年5月29日 (日) /北九州・北九州芸術劇場 中劇場
詳細は公式サイトで。
舞台「猟銃」 公式サイト