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さりげなくもとがった問いかけ/「家庭内失踪」観劇レビュー

舞台『家庭内失踪』

「家庭内失踪」に出演する小泉今日子

「家庭内失踪」は、作・演出・出演の岩松了が1989年に書き下ろして初演し、岸田國士戯曲賞を受賞した「蒲団と達磨」の後日談ともいえるホームドラマだ。

夫は定年退職し、20歳も年が離れた後妻は40代になり、倦怠の空気が漂う。
そこに出戻ってきた前妻との間の娘や、娘の夫の部下、妻に失踪したと思わせて近所から妻を監視する不思議な男がからみ、予想外の展開をしていく――。

個性的な人物たちが複雑にからみあい、物語はおかしくも意外な方向へ

倦怠期の夫婦を演じるのは、小泉今日子と風間杜夫。2008年に上演された岩松作・演出「恋する妊婦」でも夫婦役を演じただけあり、息はぴったりだ。
妻を監視する男は岩松自身が演じ、小野ゆり子、落合モトキ、坂本慶介ら実力派が脇を固める。

「家庭内失踪」小泉今日子と風間杜夫


「家庭内失踪」 左/坂本慶介 中央/岩松了 右/風間杜夫

物語は、定年退職した元高校教師・野村(風間杜夫)と、年が離れた後妻の雪子(小泉今日子)夫婦を中心とする3組の夫婦の話で進んでいく。

倦怠期を迎えていた野村たち夫婦の元に、先妻の子・かすみ(小野ゆり子)が出戻ってきて3人の暮らしが始まる。そこへ、かすみの夫、石塚の部下である多田(落合モトキ)という若い男が訪れ、かすみに家に帰るよう説得する。雪子は、夫へのあてつけか、多田を誘惑する。

また、石塚の知り合いという男、青木(坂本慶介)が訪れてくるが、実は、雪子と多田の関係を探るために野村が差し向けたらしい。
さらに、野村の元には、望月(岩松了)という不思議な友人が訪ねてくる。妻の自分への思いをたしかめるために、家から失踪して近所に住み、変装しては妻の周りをうろついて様子をうかがっているのだ。

個性的な人物たちが複雑にからみあい、物語はおかしくも意外な方向へと進んでいく。

けむに巻かれながらも、いつのまにかドラマの中へ

「家庭内失踪」の見どころのひとつは、セリフ一つ一つのおもしろさはもちろん、夢と現実の世界をあいまいに表現することで、見るものを不思議な世界へいざなっていくところだ。
たとえば、クラス会から戻ってきた野村は、「(みんな年を取ってしまい)まるで枯れ木の中を歩いているみたいだったよ」とがっかりする。あるいは、登場人物がときに壁をすり抜けたり、絶妙なタイミングでかすみと雪子を入れ替える。
観客は、けむに巻かれながらも、いつのまにかドラマの中に引き込まれていく。


「家庭内失踪」 小泉今日子と風間杜夫

「セリフにはあまり意味がない」と岩松はあるインタビューで語っていたが、「夫婦」である人たちにとっては、全編にちりばめられた、さりげなくもとがった問いかけがフックとなり、自身の夫としての在り方、妻としての在り方を見直すきっかけにもなるだろう。

本作は3月11日(金)から3月23日(水)まで、東京・本多劇場で上演。
その後、大阪・名古屋・岐阜・静岡・富山・広島・福岡・新潟・宮城・福島にて上演される。

M&Oplaysプロデュース 「家庭内失踪」公演情報
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(文:小川真理子/クロロス 撮影:長谷川美津子/エントレ)

公演情報
M&Oplaysプロデュース 「家庭内失踪」

【作・演出】 岩松了
【出演】 小泉今日子、風間杜夫、小野ゆり子、落合モトキ、坂本慶介、岩松了
【日程】
2016年3月11日(金)~23日(水)/東京・本多劇場
2016年3月27日(日)/大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
2016年3月29日(火)~30日(水)/名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッヂホール
2016年4月1日(金)/岐阜・大分市民会館 大ホール
2016年4月3日(日)/静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
2016年4月6日(水)/富山・富山県民会館ホール
2016年4月8日(金)/広島・JMSアステルプラザ大ホール
2016年4月10日(日)/福岡・そぴあしんぐう大ホール
2016年4月12日(火)/新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
2016年4月15日(金)/宮城・電力ホール
2016年4月17日(日)/福島・いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール

M&Oplaysプロデュース 「家庭内失踪」公演情報

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