光秀はいつ来るの、show must go on!! 8月2日から王子で開幕の樫物語「光秀を待ちながら」稽古場レポート
樫物語「光秀を待ちながら」稽古場より
8月2日(金)からプレビュー公演が開幕する樫物語「光秀を待ちながら」稽古場直前レポートをお届けします!
舞台はとある小劇場の劇団、劇団鬼薔薇 公演・舞台「本能寺の紅き鬼」の本番初日、開演4時間前になっても、演出を兼任する主演俳優・百目鬼翔平と連絡がつかないところから始まります。もう明らかにヤバイしスタッフ出演者関係だったらこの「連絡がつかなかったら困るよね~」というのとか「寝坊したらヤバイねー」とギリギリのジョークを飛ばすこともありますがまさか本当にされると血の気が引くお話。
もう完全にあかんやつです。現実じゃなくてフィクションだけどノンフィクションじゃなくてよかった!というバックステージもののテーマ設定。
樫物語「光秀を待ちながら」稽古場より
出演者はぶっ飛んだ「小劇場の魔女」と呼ばれる演出家、劇団員、アイドル芝居な看板女優、気弱なプロデューサー、おなじみの客演、大御所劇団出身のおじさん俳優、真面目な舞台監督、ここもぶっ飛んだ制作チームと「いやいやこんな人いないだろ・・・いや、いるわ、実在するわ」と思わせられる登場人物ばかり。
普段の芝居ではいち「役者」である役者たちが自分たちのある意味日常を「役者」として演じ、演じることのない「スタッフ」の役もやる。なんとか舞台初日の幕を上げるために出演者もスタッフも喧々囂々、丁々発止のやりとり。
「※この物語はフィクションです」なのはいつもの舞台のお約束ですが、ストーリー自体も知ってる人間だとリアルだなぁ、生々しいなぁ、と感じるし、なによりも舞台に上がっている役者の感情やハラハラさせられるのはまごう事なきノンフィクション。
生のコンテンツとはこういうことかと常々思いますが、私たちにとっての日常を少し切り出したような物語でも「事実は小説よりも奇なり」です。
樫物語「光秀を待ちながら」稽古場より
そして「緊急事態にはいかなる手段をも行使する」演出家。よく言いますよね、人間の本質が見えるのはトラブルが起きたときに対する対応いかんであると。
この日の稽古では劇中の「もうすでにハプニングしか起きていないのに畳み掛けるさらなるトラブル!」のシーンを中心に抜き稽古でした。
なぜかトラブルは雪崩のように連鎖する。けれどトラブルが起きていようとそれはあくまで演者側の都合。お客様に見せていいのは公演の遂行という結果だけ。荒唐無稽で無茶苦茶だ!という物語の裏側は劇場にてお確かめください!
Q お二人から見た「光秀を待ちながら」はどんな話ですか?
八重樫(代表・プロデューサー):小劇場演劇を題材にしていて、当事者、あるいは関係者じゃないと一見取っ付きにくい内容に映るかもしれません。ただ、実際は少年ジャンプのような王道をいくベタなストーリーになっています。群像劇ならではの、個性豊かなキャラクターたちが織り成す物語は、決してきれいには進まず、凸凹していて、そこを、お客さんにはどう受け取ってもらえるかなぁ?という期待は、凄いありますね。
樫物語「光秀を待ちながら」フライヤー
萩谷(演出):人間が、それぞれを全力で生きる物語です。
この作品では、舞台製作における、様々なトラブルが描かれます。
登場人物たちは、それに対し、それぞれの力を使って全力で対処します。
この世の中では、私たちに向かってあらゆる困難がやってきます。
私は、人間がそのような不条理に立ち向かう姿はとても美しいと思っています。
面白おかしく笑いつつも、人間の「必死」の美しい熱量も感じ取っていただけたら幸いです。
樫物語「光秀を待ちながら」稽古場より
Q 普段舞台を作っているみなさんが舞台を舞台で表現するのはフィクションでありながらノンフィクションのようなドキュメンタリーのようなものにも見えるのですが、作り手としてもやはり違うものでしょうか?
八重樫:そうですね。どこからがフィクションで、どこからがノンフィクションなのか、作っていながらかなり曖昧です。実際にあったことを面白おかしく描いていたりするのもあるんで。7割本当、3割ウソみたいな割合かもしれません。
小劇場の役者として数年活動して、樫物語というプロデュースユニットを発足させ、プロデューサー、脚本家、演出家の立場も経験したからこそ、台詞はとても生っぽく書けたと自負しています。
萩谷:うーん、どうなんでしょう。
ちょっと質問とずれてしまうかもしれませんが、ほぼ全員が舞台の製作プロセスを知っているため、「本番前の舞台」や「楽屋」などを稽古場で想像してもらう時、それぞれの経験から「◯◯劇場の楽屋はこんな感じで」みたいな話が出てきて面白かったです。
樫物語「光秀を待ちながら」稽古場より
Q お客様に一言お願いします。
八重樫:役者スタッフ一同、精一杯創らせていただきました。是非ともご観劇いただきたいです。そして、忌憚なき意見、ご感想を、心よりお待ちしております。
萩谷:トラブルが起こっても、舞台は進みます。
トラブルが起こっても、人生は進みます。
私たちの目の前にはたった一本の綱。
進みゆく時間の綱渡り。
同じ空間で、ぜひ体感していってください!
おまけ質問
Q 「光秀」はハプニングから始まる物語ですが、お二人の過去最大のピンチはありましたか?そしてどう乗り切りました?
八重樫:80分尺の二人芝居の本番三日前くらいに急性咽頭炎になったときですね。喉は唾を飲み込むだけで激痛が走り、声もでない状況で、心身ともに本当にボロボロでした。あのときは市販薬、病院からいただいた薬、漢方もろもろ、用法用量守らず、大量摂取し、お腹を壊しながらなんとか快復させて乗り切りました。
萩谷:バックパックでベトナムを旅した22歳。山奥に住む少数民族の家に一泊滞在するという企画を現地の小さな旅行会社で見つけて参加したことがあります。ベトナムの北にある小さな街から2時間バスに乗り、そこからさらに半日山登りをし、やっと到着するような山奥。その企画に参加したのは5人(日本人は僕だけ)でした。
翌朝、下山することになったのですが、なぜか僕だけ「申し込んだところが違うから」という理由で、下山バスではなく、タクシー代わりバイクの荷台に載せられ、別ルートで下山することになりました。そして、山の中腹、名も知らぬ場所でバイクの運転手は、「俺の仕事はここまでだから」と僕を無理やりバイクから下ろしました。不安でわめく日本人に、彼は「この道をまっすぐ行けばバス停があるから大丈夫」と、一本の道を指さして、帰って行きました。
唯一の希望であるその道を行くと、なんとそこには丁字路(まっすぐ行けないじゃん!)。地図もなく、携帯も使えず。ただ勘だけを頼りに死ぬ気でバス停を探し回りました。
今、こうして無事に演劇を作れているのは、あのとき、泣きそうになりながらバス停を探し続けた「死ぬ気」のおかげです。
本作は8月2日(金)から東京・花まる学習会 王子小劇場で上演される。
詳細は公式サイトで。
(文:藤田侑加)
樫物語第3回公演「光秀を待ちながら」
【作】八重樫良友
【演出】萩谷至史
【出演】岡田茜、福永莉子(特別出演)、伊藤さくら(8月2日昼出演)、前田有加里(8月2日夜、3日昼出演)、弘松菜摘(8月5日昼夜出演)、七海有希(8月3日夜、4日昼出演)、一色恵吏奈、斉藤至大、夕瑛、谷一葉、林真由美、比嘉ニッコ、沖田帆波、大江裕斗、高橋岳則、佐伯佑佳、濱田侑香里、宮下浩行、ひとみほのか、菅野奈都美、梓友笑、八重樫良友、古堂たや、野崎万葉(8月4日夜出演)
2019年8月2日(金)~8月5日(月)/東京・花まる学習会 王子小劇場
公式サイト
樫物語第3回公演「光秀を待ちながら」
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