つかこうへいが1974年に文学座に書き下ろした「出発」の初演版が、9PROJECTにより3月5日より日暮里d-倉庫で上演
9PROJECT vol.9「出発」メインビジュアル
9PROJECTによる舞台「出発」が3月5日(火)から東京・日暮里d-倉庫で上演される。
9PROJECTは、つかこうへいが主宰した北区つかこうへい劇団のメンバーによって結成された演劇ユニット。これまでも「ストリッパー物語」「生涯」「熱海殺人事件~1973年初演版」「つか版・忠臣蔵」など、つかこうへい初期の作品を上演してきており、上演に際しては戯曲に脚色を一切しないことに強いこだわりを持っている。
一方、「出発」は、つかこうへいが「熱海殺人事件」で岸田國士戯曲賞を当時最年少で受賞した後、その受賞後第一作目として文学座のアトリエ公演用に書き下ろした作品。その後、つか自身の演出では、田中邦衛・風間杜夫らによって何度も上演された。
1978年には舞台の公開前に全編をテレビで生中継するなど大きな話題を呼び、初期の代表作の一つとなった。また本作は、風間杜夫が初めてつか作品に出演した、記念碑的な作品でもある。
今回は、あえて文学座に書き下ろした“つか演出以前”の初演版を、脚色無しで上演する。
「うちの親父は筋金入りの蒸発だぜ。並のトンズラじゃないんだぜ!」
岡山家の当主、岡山八太郎が蒸発した。
その噂は、すぐにご近所に知れ渡っていた。ある者は昨夜電信柱の陰で見たといい、ある者は失踪の理由をアレヤコレヤと言い立てる。しかし、当の岡山家の食卓は、厳粛なる空気に包まれていた。
呪われた家系を持つ岡山家の当主が蒸発したのである。
ただフラリといなくなったわけではない。そこらのホステスと逃げ出したわけでもない。高尚かつ哲学的な意味を持って蒸発したのに違いないのである。そしてこの寒空の下、残してきた家族を思い、それでも帰るわけには行かないその身の不幸を嘆きながら、涙を流しているのに違いないのである。
であるならば、その父の帰りを待つ家族も、それ相応の覚悟を持って日々の暮らしを営まなくてはならない。
今、岡山家は“正しい家族の在り方”を目指し、意地と覚悟をぶつけ合う…。
果たして、父親は帰ってくるのだろうか。
果たして、岡山家の体面は保たれるのだろうか。
不条理なストーリーの中に笑いが溢れ、真に正しい家族の在り方が描き出されていく。
つか版「父帰る」とも言うべき、ホームドラマの傑作です!
酒井政利(メディア・プロデューサー)
つかこうへいの言葉には、胸を突き刺すような切なさを覚える。そして、生きる養分、勇気として語りかける力がある。9PROJECTの舞台を観るたび、同じ力がそこに息づいているのを感じてならない。つかこうへいの舞台を引き継ぐ若者たちがいることを何よりもうれしく思う。
渡辺和徳(演出)
近年、なかなか上演されることのない、つかこうへいの初期作品ですが、一度ご覧いただくといわゆる「つか芝居」のイメージを根底から覆されると思います。別役実作品のような不条理さ、大衆演劇のような人情と笑い、様々な哲学への深い造詣、そして何よりも、人間というものへの深い愛情…それらがミックスされて、昇華されたのがこの「出発」です。9PROJECTだからできる、脚色無しの“原形”をお楽しみください!
9PROJECT vol.9「出発」フライヤー
本作は3月5日(火)から東京・日暮里d-倉庫で上演される。
詳細は公式サイトで。
(文:エントレ編集部)
9PROJECT「出発」
【作】つかこうへい
【演出】渡辺和徳
【出演】小川智之、岩崎祐也、高野愛、山本あさみ(劇団桟敷童子)、相良長仁、浅野鼓由希
2019年3月5日(火)~3月10日(日)/東京・日暮里d-倉庫
公式サイト
9PROJECT『出発』
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