井上道義×森山開次 オペラ歌手と《身体》を見つめ直して作り上げる 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見レポート
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』井上道義、森山開次
井上道義の総監督・指揮、森山開次が演出・振付を手掛ける歌劇『ドン・ジョヴァンニ』の記者会見が行われた。
『ドン・ジョヴァンニ』はモーツァルトによる歌劇。稀代のプレイボーイであるドン・ジョヴァンニと3人の女性を中心に描いた作品で、幾度となく上演され続けている名作の一つだ。
総監督・指揮を務める井上道義は、2015年に野田秀樹と共に『フィガロの結婚』を上演したが、今回はダンサー・振付家として活躍している森山開次を演出・振付に迎えて歌劇『ドン・ジョヴァンニ』を作り上げる。
また、言語で上演されることの多いオペラを、今回はあえて全幕日本語で上演する。
本作の記者会見が行われ、井上道義、森山開次に加え、メインキャストが登壇した。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
井上道義は冒頭の挨拶で「野田秀樹との『フィガロの結婚』の後に何をしようかと思った時に、僕の歳も考えて思い切り若い人とやりたいなと。森山くんは素晴らしい才能だし、いろんな分野で活躍できる人だと思います。今回は大いに冒険してみます。オペラというものに対して、お客さんがいい意味で気楽に、誰が聞いても見ても合点がいくようなあり方でやっていきます。」と抱負を語った。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
初めてオペラの演出を手掛ける森山開次は「僕の名前を挙げて頂いたことは勇気があることだと思います。オペラの知識が浅く知らないことが多い分『こんなことはどうだろうか?』とか、萎縮することなく思い切って挑戦したいと思います。オペラ歌手の方々が『身体』というものを改めて見つめ直した時に、歌いながらではありますが、より『身体性』を考えていく時間になればいいなと思っています。」と抱負を語った。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
ドン・ジョヴァンニを演じるヴィタリ・ユシュマノフは、「初めて歌った時はドイツ語。2回目は原語でイタリア語。そして3回目の今回は日本語で歌います。4回目はロシア語になるかもしれません。」と自身とドン・ジョヴァンニの不思議な関係を披露。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
ドン・ジョヴァンニの従者レポレッロ役の三戸大久は「僕は今年42歳なんですが、気が付いたらこの中で一番年上になっていました。僕が大学に入った1996年くらいはまだ原語ではなく日本語でフィガロの結婚とかをやっていましたが、僕は20年間原語でやってきましたので、日本語でやるというのが最初は戸惑いましたが、興奮や期待を感じています。」と日本語上演に意気込んだ。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
ドンナ・アンナを演じる髙橋絵理は「アンナは10年以上前にイタリア語で歌ったことがあるんですけども、日本語で歌うのは初めてです。せっかく日本語でやっているので、キチッと言葉が届くように歌いたいと思います。」と抱負を語った。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
騎士長役のデニス・ビシュニャは「日本で歌うのは3回目です。オーディションの時に森山さんに、『少しダンスしてください』と言われてびっくりしました。本番でもダンスするのかな・・・?とても楽しみです。」と笑顔でコメント。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
ドンナ・エルヴィーラ役の鷲尾麻衣は「自分の声がわりと軽いと思っていたので、ツェルリーナ役志望でオーディションを受けましたが、マエストロから『エルヴィーラ役もあるんだよ』と言われて、今回はエルヴィーラを歌わせて頂くことになりました。3人の女性が出てきますが、私は一番エルヴィーラに近いと思います。ヒステリックで、自分の感情を押し殺さず、大好きな人を無我夢中で追いかけていく。こういう部分を舞台上でぶちまけられるのは私にとっての喜びです!」と役とからめて会場の笑いを誘っていた。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
ドン・オッターヴィオを演じる金山京介は「唯一のテノールということで、テノールらしさを出せればいいなと思っています。」と意気込んだ。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
ツェルリーナを演じる小林沙羅は「5歳から17歳までクラシックバレエをやっていて踊ることが昔から大好きでした。森山さんが演出されると聞いて、これは絶対出たいと思ってオーディションを受けました。その時に『クルクル3回まわって椅子に座ってください』と言われたんですけど、歌いたい気持ちが強くて4回もグルグル回ってしまって・・・。かわいいだけじゃないツェルリーナを出していきたいと思います。」と語った。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
Wキャストでツェルリーナを演じる藤井玲南は「大学院でドイツの歌劇場で研修生として所属していた時にドイツ語で勉強させて頂きました。舞台上をバイクが走り回ったりするような激しい舞台だったので思い出深い作品でもあります。今回は森山開次さんの演出なので、エネルギーに満ち溢れた誰も見たことがないような舞台になると思います!」と期待を膨らませていた。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
そして、マゼット役の近藤圭は「僕も母がバレエ教師、姉が海外でバレエダンサーとして踊っていて、僕もやれと言われてきたんですが、白タイツをはくのがどうしても嫌だったのでやりませんでした。バレエを見るのは大好きですが、踊る自信はありません・・・。森山さんの演出でどんな化学反応が生まれるのか楽しみです。」と、こちらも森山演出を楽しみにしている様子だった。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
日本語の歌詞も井上さんが書くのかという記者からの質問には「昔からある日本語の歌詞は古くてダメ、気持ち悪いんだ。だから本当にたくさん書いている。」と答え、さらに「ものすごく大変だけど、それでもやってみたい。それは演出のためでもある。」と日本語歌詞を作り出すことの苦労を語った。
演出として大きな期待を受けている森山開次は「ダンスを突き詰めていく中で、言葉のない世界にいながら、また言葉の世界に戻りたいという思いも今もどこかにあって、こういった言葉を扱うプロダクションに戻れるというのは嬉しいことです。
『踊る』ことと『身体』は僕の中では同義語になっているんです。単に歌いながら踊るということではない、『動かなくても踊っているような身体、いかた』はできると思うんです。」と独特の見解。
さらに美術のことを聞かれ「女性3人のキャラクターが三者三様で、まるでドン・ジョヴァンニ自身が女性の子宮の中で暴れまわっているような印象を持ったものですから、こういった美術と衣裳にしようと思いました。」とコメント。会場に用意された美術の模型も、森山のそんなイメージが投影されたような独特な様相を呈していた。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見より
本作は2019年1月20日(日)から富山・オーバード・ホールで上演。
さらに、1月26日(土)、27日(日)に東京芸術劇場コンサートホールで上演し、2月3日(日)には熊本県立劇場演劇ホールで上演される。
詳細は公式サイトで。
(撮影・文:森脇孝/エントレ)
モーツァルト 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』
【総監督・指揮】井上道義
【演出・振付】森山開次
【管弦楽】読売日本交響楽団
【合唱】東響コーラス
【出演】
ドン・ジョヴァンニ:ヴィタリ・ユシュマノフ
レポレッロ:三戸大久
ドンナ・アンナ:髙橋絵理
騎士長:デニス・ビシュニャ
ドンナ・エルヴィーラ:鷲尾麻衣
ドン・オッターヴィオ:金山京介
ツェルリーナ:小林沙羅(1月26日出演)、藤井玲南(1月27日出演)
マゼット:近藤圭
ダンサー:浅沼圭 碓井菜央 梶田留以 庄野早冴子 中村里彩 引間文佳 水谷彩乃
南帆乃佳 山本晴美 脇坂優海香
2019年1月20日(日) /富山・オーバード・ホール
2019年1月26日(土)、27日(日)/東京・東京芸術劇場コンサートホール
2019年2月3日(日)/熊本・熊本県立劇場演劇ホール
公式サイト
モーツァルト 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』
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