毎月新作を上演し続けている!? ポップでアートな楽劇座の秘密に迫る! 関口純・五條なつきにインタビュー
楽劇座 関口純、五條なつき
現在も毎月欠かさず公演を続けている劇団・楽劇座の芸術監督・関口純と、看板女優・五條なつきに、インタビュー取材した。
楽劇座(がくげきざ)は、ドイツ語学者であり新劇初期に日本の演劇界に多大なる影響を与えた関口存男(つぎお)の曾孫・関口純が立ち上げた劇団。そのレパートリーは古典からミュージカル、シリアスからコメディまで多岐に渡る。
また、画廊を改装したという新宿の劇場・シアターローズセラヴィを所有し、2012年から現在(2018年6月)に至るまで毎月必ず1作品上演を続けているという稀有な劇団だ。(2018年6月公演は76ヶ月目!)
なぜ、毎月公演を行うのか。(というか、脚本の執筆や稽古はどうやったら間に合うのか?)可愛らしいくも、ブラックなユーモアがあふれる独特のテイストはどこからやってくるのか?
ふつふつと湧き上がってくる素朴な疑問を解決すべく、楽劇座の芸術監督を務める関口純と、看板女優の五條なつきに話を聞いた。【動画6分】
楽劇座 芸術監督 関口純
関口「曾祖父の関口存男(せきぐちつぎお)が、そののち俳優座さんや文学座さんに続いていく『踏路社(とうろしゃ)』の最初の作品の演出をやってました。父は某三大新劇団の制作をやっていたし、母も紀伊國屋ホールなどに出演する女優でしたので、親の友達で家に来る人の多くは新劇系の俳優さんだったんです。
自分はクラシックの作曲をずっと勉強していて音大の先生のところに高校生ぐらいから通っていたんですが、20代の時に、オペラとかミュージカルなどの音楽劇を作ろうと思ったんです。
新劇は音楽で言えば、クラシックみたいなもので技術を持ってやる。ポップスとかロックとかは、どちらかというとマスコミ系のもの。どっちがいい悪いというわけではなくて、違うものだと思うんですが、僕は技術というものに興味を持っていたので、【パッケージはわかりやすく、中身は芸術の技術を持って作っていく】というのが一番いいんじゃないかなと思って、それで始めたのが楽劇座なんです。」
楽劇座 五條なつき
五條「私は最初から参加しているんですが、観客が単純に楽しいという華やかさがあり、それでいてキチンと中身があって哲学性がある作品をやれるので、すごく意味のある劇団だと思っています。」
楽劇座「マカロンちゃんの憂鬱」より
関口「(劇団や俳優を)職業ということで考えると、たぶんプロ野球選手も、プロ球団に入ったからプロなんじゃなくて、(そこで常に)活動することでプロとしてのスキルが身についていく。そして、気が付くとプロになっている。お芝居も場があることが大事だなと思ったんです。
そういう意味で『常にやっているところ』という意味で劇場を作ったので、常にやっている、ということです。」
-----毎月公演するのは大変じゃないですか?
五條「大変です(笑)。公演が終わって、関口先生が2、3日で台本を書いて下さったものを、次のお稽古までの3、4日でとりあえず通せるように覚えてきてねという感じで。最初は私にできるんだろうかというところから始まったんですけど、1枚でもチケットが売れると、それは観に来てくださるお客様がいらっしゃるということなので、プロとして覚えられませんでしたでは済まないので。」
楽劇座「ルーシー・フラワーズ」より
-----たまには休みたいと思いませんか?
関口「・・・毎日思ってます。
例えば、休みの日にずーっと寝てたいと思うじゃないですか。」
-----思います。
関口「・・・でも、起きません? いつかは。死んでない限り起きちゃうわけです。生きるってことですよね。芝居作るというのが生きる・LIFEに結びついちゃってる。別にかっこつけていっているわけじゃなくて。
・・・、まあ書くかってなって書き始めると、2日後に出来上がっているという感じです。
座員のみんなもそうで、まあ、やるかってなって、せりふを覚えているんだと思います。」
楽劇座「マカロンちゃんの憂鬱」より
関口「例えば、古代の人達が雨が無い日に、雨を降らせてくださいとか、災いが起こりませんようにって祈るとか。当時の人にとってはリアルな問題なんですよね。僕たちのリアルという問題は何かというと、まあ時事ネタとは言いませんけど、本当に私たちを取り巻く問題。
例えば『マカロンちゃんの憂鬱』のシリーズでは、バカとかブスとか言わせるせりふがあるんですね。お客さんは『ひどーい』とかいうんですけど、一番笑いが起こるのはそこだったりするんですよ。お客さんに喧嘩売ってるわけじゃなくて、僕たち(お客さん)はそこでふっと気付くかもしれない。というか、気づかなくちゃいけない。テレビの前に座って『政治家がバカだ』と言っている自分を、その中に見なくちゃいけないんじゃないかなと。そういう空間かもしれないですね。『ルーシー・フラワーズ』シリーズなんかもそうです。」
楽劇座「デンデンドロイカ」
関口「7月、8月、9月に関しては、おこがましいのですが『関口純の演劇論』というシリーズをやります。演目としては7月は『デンデンドロイカ』、8月は『有栖川家の密やかな愉しみ』、9月は『ルーシー・フラワーズ』。
『デンデンドロイカ』は加害者の闇をテーマにした、子殺しの話。扱っている題材はかなりシリアスなんです。」
楽劇座「有栖川家の密やかな愉しみ」
関口「8月の『有栖川家の密やかな愉しみ』は、一見ふざけているわけです。こたつである女の子が、『オレオレうーさぎ』のウサギさん(・・・詐欺ね)と、『ネズミこう』というねずみ君が出てきます。コントみたいに思われるかもしれないけど、これは昭和に実際にあった毒入りコーラ事件というのがあって、僕が小さいころに『なんで大人は置いてあるコーラを飲んでしまうんだろう?』って疑問を持ったことがあるんですね。そこから始まってアリスの『Drink Me』と『Eat Me』。なぜ人は飲んで食べるのかということから、被害者の心の闇をテーマにテキスト化しています。
表面的には一見ふざけたようなものに見えるけれど、かなりシリアスな内容を書いています。」
五條「今回のシリーズでは、関口先生の解説が付くので、楽劇座を初めて観る方でもわかりやすい機会だと思います。」
関口「かえって分かりにくかったりしてね(笑)」
五條「是非、まだ観たことがないという方も、足をお運び頂けたらと思います。」
私はこれまでに『ルーシー・フラワーズ』『マカロンちゃんの憂鬱』を観劇。独特なポップなテイストと、ところどころに感じる風刺のスパイスが効いた作品だったが、『デンデンドロイカ』『有栖川家の密やかな愉しみ』は、また全然テイストが違うとのこと。これからの連続上演が楽しみだ。
詳細は公式サイトで!
(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ)
この記事を書いたのは

楽劇座『関口純の演劇論』シリーズ
7月公演『デンデンドロイカ』
【脚本・演出・音楽】関口純
【出演】五條なつき、齋藤蓉子、大西佐依
2018年7月28日~31日/新宿・シアター・ローズセラヴィ
8月公演(8月25日~29日)『有栖川家の密やかな愉しみ』
9月公演(9月22日~26日)『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』
会場:新宿・シアター・ローズセラヴィ
公式サイト
楽劇座「関口純の演劇論」シリーズ
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