2018.3.15  3

青年座劇場がまもなく一時休館/山野史人、古川慶弘、水谷内助義による特別鼎談


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『雨のワンマンカー』舞台写真
『雨のワンマンカー』舞台写真
 

青年座劇場一時休館を前に、山野史人、古川慶弘、水谷内助義による鼎談が行われた。

 
1969年の開場以来、劇団青年座の創作活動の中心にあった青年座劇場が、『砂塵のニケ』をもって一時休館する。
そこで今回特別企画として、長い歴史をもつ青年座劇場について、『砂塵のニケ』出演者の山野史人(やまの・ふびと)と青年座演出部・古川慶弘(ふるかわ・よしひろ)、青年座製作部・水谷内助義(みずやち・すけよし)の三名が語った。

 

下北沢から代々木八幡へ

 
水谷内 1969年に下北沢から代々木八幡にうつってきて49年。
山野  そんな経つのか。
水谷内 65,66年くらいから何となく、下北沢から代々木八幡に移るって話を聞くようになったよね。だけど移動ってピンとこなかったな。
山野  あの頃、アングラが流行っていて、自分たちの劇場を持ちたいって思いが強かったんじゃない。
水谷内 引っ越しの時は演出部大変だったんじゃないの。 
古川  俺はこっちに移ってくる時にあんまり関わってないんだよな。研究生に手伝ってもらったんだよ。幻の一期と言われる西田(敏行)とか、今在籍しているメンバーだと(高橋)ひろ子や(吉本)選江だな。
水谷内 西田たちの研究所卒業公演は八幡に移ってきてやったんだ。
俺たちは稽古場を持つってことが、どれほど大変だったかって何となく知ってるわけじゃない。我々は入った時にまず下北があって。その時もあれだけの規模の物を持っている劇団って数少なかったんだよ。それから4~5年もしないうちに、こんなすごいところが出来たわけじゃない。若い連中が好き勝手やってたよな。
古川  今、考えてもよくやったと思うよ。

 

劇場の壁を全て黒塗りに

『象』舞台写真
『象』舞台写真

水谷内 1970年頃、当時若手劇作家としてバリバリやってた別役実さんとか清水邦夫さんとかに書き下ろしを頼むんだよ。それで、別役さんの『象』(※1)を上演した時に、美術プランナーの朝倉せっちゃん(朝倉攝)が…。
古川  劇場の壁を黒くしなきゃダメだって(笑)
水谷内 鮮明に覚えてるんだけど、せっちゃんが「劇場の壁が白いのなんて、ブロードウェイじゃどこにもないわよ!」って。演出部のボス・土岐八夫さん仕切りの元に「壁を全部黒く塗れ」って言われてさ。 丸々一週間、寝る暇もなく塗ったんだよ。色んな劇団の中でもだよ、やっぱりダントツに活動的というか行動力がすごいあったんだと思うよ。

※1『象』(1970年)作=別役実 演出=五十嵐康治

青年座劇場写真
青年座劇場写真

山野  この劇場出来てから、公演本数も増えたし。
水谷内 いやもう圧倒的よ。
古川  演出家や美術家はこの劇場を使うことがおもしろかったんじゃない。今度はどういうのやろうかって。色んな使い方してたもんなぁ。
山野  今になって思うけど、劇場持てるっていうのは、つくづくいいなって思うもんね。ここがなくなると、そのありがたみがわかると思うよ。

 

五人の作家による連続公演

水谷内 劇団が本格的に活躍していこうっていう、そういう流れでもってやっぱり革新的だったのは「五人の作家による連続公演」(※2)だね。
古川  最初の2カ月は、一週間ごとに公演して。
水谷内 それで秋に日替わり公演をやったんだよ。

※2 五人の作家による連続公演(1980年)
『青春の砂のなんと早く』作=清水邦夫 演出=五十嵐康治
『木に花咲く』作=別役実 演出=石沢秀二
『鏡よ鏡』作=石沢富子 演出=栗山昌良
『ドラム一発!マッドマウス』作=高桑徳三郎 演出=篠崎光正
『ほととぎす・ほととぎす』作=宮本研 演出=鈴木完一郎

『ドラム一発~』舞台写真
『ドラム一発!マッドマウス』舞台写真

山野  結構評判になったよね。世間的にも五本連続上演って珍しかったから。
俺は篠崎(光正)演出の『ドラム一発マッドマウス』に出演してたんだけど。あれはもうひどかったね。ボクシングシーンが出てくるんだけど、本当にやらなきゃいけなかった。だから、ジムに通わされてさ。で、篠崎が「本番でも本当にパンチを当てろ」って言うんだよ。ここの青年座劇場は舞台と客席が近いだろ?だから本当にやらないとダメだって言って。ボクシング本当にやらすんだぜ?あいつ(笑)それで、ラストシーンで主役の久世龍之介と殴りあう所があんだよ。初日にパーンと顔にパンチを入れたんだよ。そしたら次の日顔に青タンができちゃって。
水・古 ははは。

『ドラム一発~』舞台写真
『ドラム一発!マッドマウス』舞台写真

山野  「ほら見ろ、だからダメだろって」(笑)。大変な思いしたよ。
舞台の飾り替えも大変だったな。日替わりなんてこの劇場をフル活用してたってことだよなぁ。
水谷内 やっぱり劇場があるから、そういう乱暴なことも出来るんだよな。
山野  そうそう、そうだよ。
水谷内 実験劇も含めて、圧倒的な公演数で培ったものが一つの形として25年周年の企画になったわけだ。ここに移って10年目。それまでアングラしか話題にされてなかったんだけど、一気に青年座がこの年の話題の中心になったな。今考えたらよくあんなことやってたね。
山野  日替わりなんてすごいよ。
毎日バラして仕込んで、旅みたいなもんだった。でも役者だって大変なんだよ。四日間、本番が空くわけだから。稽古するわけじゃないしさ。ぶっつけだから、その日(笑)。でも面白かったよ、すごく。
古川  教室に全部の道具収めて、一日ずつ公演が終わるごとに入れ替えしてたよ。
水谷内 この企画は評価が高かったんだよな。
山野  みんな質も良かったしね。
古川  「ドラム一発~」は若い子に人気だったんだよな。
水谷内 圧倒的に人気あった。
山野  体張ったからなあ。
古川  役者がよかったんだよ(笑)。

 

大変だった公演

山野  「雨のワンマンカー」(※3)って芝居も忘れられないね。
古川  あれも大変だった(笑)
山野  装置に本物のバスをもってきたんだよ。都バス丸ごと買ってさ。

※3『雨のワンマンカ―』(1976年)
作=小松幹生 演出=篠崎光正

『雨のワンマンカー』舞台写真
『雨のワンマンカー』舞台写真

水谷内 実物の運転席を舞台に飾りたくて。で、搬入口に持ってきたのはいいんだけど大きすぎて入らないんだよ。業者呼んで、二つに切断して運んだんだけど本物だから重くてな。結局バスが重すぎて、舞台稽古の最中に盆のキャスターが壊れて動かなくなったんだよ。
山野  盆の修理をするために、また徹夜(笑)。
水谷内 なんとかキャスター直して。ぶっつけ本番だよ、初日は。
山野  あと印象に残ってる芝居ってなんだろうねぇ。
水谷内 スタジオ公演でさ、「どらまないと」(※4)ってやったじゃん。
山野  ああ、石沢富子さんの本で。客席から大根投げられたのあの芝居だよね。
水谷内 うん、大根ぶん投げたんだよ。
山野  餓えて餓えてしょうがないっていうシーンがあるわけ。食べ物がなくて彷徨うっていう。その時に客席から大根が飛んできたんだよ。アングラみたいな…そういう芝居が流行ってたんだよね。
水谷内 でも芝居は続けたよな。
山野  うん、なんとかね。シーンごとの芝居だったからね。
水谷内 オムニバス。で、ばあさんの役をやってたのが西田なんだよね。
山野  ああそうだ。初井(言榮)さんと。そういうシーンあったね。

※4『どらまないと』(1970年)
構成=石沢富子・石沢秀二 演出=石沢秀二

『どらまないと』舞台写真
『どらまないと』舞台写真

水谷内 西田と初井さん二人のシーン。絶品だった。
…まあそろそろ時間だけども。まとめるとこの劇場には不可能はなかった〟っていうのはどう?
山・古 ははは。
山野  やりたいことやれたもんねぇ。ウチの演出部も優秀だから色んな事が出来たんだと思うよ、俺は(笑)
古川  そりゃあそうだよ(笑)
山野  みんな身を粉にして続けてきたっていうかさ。
水谷内 「青年座劇場」っていうのは、とにかく何が出てくるかわからないって意味では、強烈な印象を残せたよな。
山・古 そうだな。

 


現在の青年座劇場での最後の公演となる「砂塵のニケ」は、3月23日から上演される。
詳細は公式サイトで。

 
(文:青年座製作部)

 

 

 

公演情報

青年座「砂塵のニケ」

作=長田育恵(てがみ座)
演出=宮田慶子

キャスト
緒川理沙=那須凜
緒川美沙子=増子倭文江
陣内敦夫=横堀悦夫
津村拓郎=久留飛雄己
篠田美玲=野々村のん
市來さおり=清瀬ひかり
加賀谷直人=綱島郷太郎
笹本譲治=松川真也
佐久間勉=山野史人

2018年3月23日(金)~31日(土)/東京・青年座劇場

公式サイト
青年座「砂塵のニケ」

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