2017.12.18  91

ノルウェーの古典戯曲×韓国の今一番注目の演出家×日韓キャストの化学反応=?『ペール・ギュント』観劇レビュー


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世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 『ペール・ギュント』 撮影:細野晋司
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター『ペール・ギュント』撮影:細野晋司
 

ノルウェーの古典戯曲×韓国の今一番注目の演出家×日韓キャストの化学反応=?『ペール・ギュント』観劇レビュー

 
「人形の家」「ヘッダ・ガーブレル」などの作品を手がけ『近代演劇の父』とも言われるノルウェーの劇作家イプセンが1867年に書いた『ペール・ギュント』は自由奔放な青年ペールがたどる数奇な一生を描いた物語で、初演以降名だたる演出家によって上演され続け今日に至る有名戯曲です。

「ペール・ギュント」はむしろ名前としてはクラシックの方が「名前は知らなくてもフレーズきいたことある!」という人が多いのかも。
演出のヤン ジョンウン氏は来年2月の平昌オリンピックの開会式・閉会式の総合演出を担当されるということもあるので、ある意味今の時期一番注目な演目ではないでしょうか。

世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 『ペール・ギュント』 撮影:細野晋司
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター『ペール・ギュント』撮影:細野晋司

 
ところで韓国エンタメは「冬ソナ」からのヨン様ブームに始まり数々のK-ポップの歌手が紅白などの歌番組に登場したり、韓国ドラマや韓国映画などは日本の漫画原作の作品があったりとここ10年以上比較的身近なものにもかかわらず「演劇」カテゴリについてはピンとくるかと言われれば、意外と知られていないのでは。

今作は2013年の第20回BeSeTo演劇祭で今回の演出のヤン ジョンウン氏が率いる「劇団旅行者」バージョン以来の日本での上演。今回は日本人キャスト韓国人キャスト合計20人で繰り広げられます。

 

日韓の俳優コラボ、「違うからこそ」活かせる魅力

世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 『ペール・ギュント』 撮影:細野晋司
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター『ペール・ギュント』撮影:細野晋司

キャストどうし、どうしても第1言語が違い、かつ上演する国がどっちかの国、となると今作品もメインの言葉を「日本語」に合わせざるを得ないのが実情。でも、日本語のセリフに対して韓国語で返事が返ってきてもなぜかそんなに違和感がない。それは「ペールの言ってることと、周りの言ってることは、『お前、何を言うとんねん』と噛み合わない・理解されないシチュエーション」だからなのかもしれません。

また、日本語と韓国語は似てるようでやっぱり違うのですが、「日本語っぽく聞こえる韓国語(意味は違う)」をうまく活用してオリジナルの戯曲にはないボケツッコミポイントが入っているのも「言葉遊び」として今作ならでは。違いをうまく使った心憎い演出です。

世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 『ペール・ギュント』 撮影:細野晋司
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター『ペール・ギュント』撮影:細野晋司

そして役者みなさんの体の使い方がすごくうまい!この戯曲、1867年に書かれた作品なので、いわゆるコスチューム・プレイの時代劇ではなく、「もちろんオリジナルの時代のときにはそれ、ないよね?」という自由な解釈で展開しています。

あるシーンはミュージカル映画のように軽快に、またある時はボリウッド映画のようなシーン、そしてまたある時はコンテンポラリーダンスのように身体表現だけで魅せるシーンがあったりと、まさに「ペールが旅してきた世界を役者が全身で表現している」ので、見応えは抜群です。

 

音楽も生演奏で多彩なジャンルの曲が聞けるのも聞きどころ!

世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 『ペール・ギュント』 撮影:細野晋司
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター『ペール・ギュント』撮影:細野晋司

ところどころに個々人の得意分野であろうソロが入っているのもご注目。ペール役の浦井健治さんは、数多くのミュージカルに出演されている実力をいかんなく発揮。ソールヴェイ役の趣里さんはバレエダンサーを目指していた経歴の通り、踊るシーンもあり見事でした。

キャスト総勢20人のうち、ペール以外の19人は「え、さっきまでメインの役やってたのに別のシーンではアンサンブルで登場!?」と八面六臂に活躍されるのもすごかった。

 

不朽の命題『自分探し』とは

世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 『ペール・ギュント』 撮影:細野晋司
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター『ペール・ギュント』撮影:細野晋司

そんな見た目の賑やかさ、そして何より浦井健治さん演じるペールの「もうどうしようもないぐらいのチャラ男っぷり」に反して、作品を貫くテーマはとても哲学的な印象を持っていました。

モラトリアム人間的な、使い尽くされたような「自分探しの旅」と言ってしまえば簡単なのですが、自由奔放に生きること、でも、それでも満たされないのか・・・。
物語の最後の最後にこれまでの「自分自身」「おのれ自身」と繰り返していたペールが「誰かに証言してもらいたい」という真逆の行動を取りはじめるのは、ある種 現代病的なものを感じました。

現代病と思えるということは、それはきっと「昔から変わらないところ」なのかもしれません。

 
このレビューを書いたのは

藤田侑加
ふじた ゆか|兵庫県神戸市出身。武蔵野美術大学で舞台美術を専攻後、卒業後演劇の制作として活動を開始。現在はフリーで演劇の企画・広報・制作から海外の演劇祭などにも参画中。

 

 

 

公演情報

舞台「ペール・ギュント」

【原作】ヘンリック・イプセン 【上演台本・演出】ヤン ジョンウン

【出演】
浦井健治
趣里 万里紗 莉奈 梅村綾子
辻󠄀田暁 岡崎さつき
浅野雅博 石橋徹郎 碓井将大 古河耕史
いわいのふ健 今津雅晴 チョウ ヨンホ
キム デジン イ ファジョン キム ボムジン ソ ドンオ
ユン ダギョン マルシア

2017年12月6日(水)―12月24日(日)/東京・世田谷パブリックシアター
2017年12月30日(土)―31日(日)/兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

公式サイト
舞台「ペール・ギュント」

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