第6回クォータースターコンテスト(QSC6) ノミネート会議 選考スタッフ座談会
第6回クォータースターコンテスト(QSC6)ノミネート会議 選考スタッフ座談会
第6回クォータースターコンテスト(QSC6)ノミネート会議 選考スタッフ座談会
QSC6ノミネート選考会議を終えたばかりの運営委員会メンバーが「個人的に気になった作品」を語る座談会を決行しました。記事の終盤には、全エントリー団体にエールを込めて、各メンバーが意識している評価ポイントを激白しています。QSC6グランプリ発表は12月9日(土)。どうぞ最後までお付き合い下さい!
A かのうとおっさんは今年も良かった。『たゆたう僕と看護婦の3か月』。病室のコントで、ベッドが週刊少年ジャンプで出来ている。「?」と思いつつ観ていたら、それがギャグの伏線になっていて。15分間ちょこちょこ笑わせてもらいました。
C かのうとおっさんと自己批判ショーはQSC常連で皆勤賞。今年もエントリーしてくれました。
自己批判ショー『月月火水木金金曜サスペンス劇場「黒革っぽい手帖」』
A 自己批判ショーのサスペンスコントは予想外。驚いたけど、サスペンスとしてはシンプル。
E 私、『黒革っぽい手帖』というタイトルがあまりピンとこなかった。
C 私も。
B 笑いは難しいよね。笑いと緩さは大事な関係性にあり、そのバランスは非常に繊細。緊張と緩和。個人的にはもう少し煮詰めた笑いが観たかった。
C 緩さで勝負するのなら、それを全面に押し出して欲しい。自己批判ショーは良かったけど、ノミネートには至らなかった。
E コメディ系の作品だと、ピーチ『留学生』。雰囲気はいいのに、観た後に残る「何か」が足りない。作品性でも笑いでもテーマでも、何でもいい。「観て楽しい作品」と「観て残る作品」には、やはり違いがあります。
D タイトルが『留学生』だから、留学生がイチオシなんだよね、きっと。
F Rana Dayeさんという女性が演じています。
E 前半は留学生の存在が活きていて、後半も掻き回して欲しかった。
B 彼女、途中から傍観者になっちゃったよね。
F 惜しい。
C 大浜直樹・LIVES『go to crossroads』はどうですか?
A 躍動感がありました。好きです。
C QSC作品はカメラワークを「目線」に見立てることが多いけれど、その意味で少し混乱しちゃいました。俯瞰した存在の女性が、目線になり得るカメラに写り込んでいたので、「これは誰の目線なの?」みたいな。
B これはQSC6全体の感想だけど、物語をきっちり描いている作品は、まとまり過ぎちゃう印象が強い。そうなると「気持ち良くなって終わり」感が残る。しっかり計算した上でやりたいことを撮っているので、その点で高評価なんだけど、ちょっと勿体ない。『go to crossroads』以外でも、瑞生桜子(The Vanity’s)『Everyday goes on』とか、創作ユニット・ヤマアラシ『見られてはいけない’17』とか、見せたいものがしっかりあり、それをどう見せるかも考えられているけれど、きれいにまとまり過ぎちゃった気が。
short drama unit teeny-weeny『迷子センター』
E ティニウィニ(short drama unit teeny-weeny)が久しぶりに参戦! コメディとして構成がしっかりしている。
D 『迷子センター』。ティニウィニは観やすいよね〜。
E 安心して観られました。きっちり笑わせてくれて、安定感は素晴らしい。ただ、設定や演技が安定している分、新鮮さみたいなものが少ない。実力派だからこその冒険が観たかった。
F 曽奈千春さんが場内アナウンスをする役で、彼女は声もキレイ。
E 滑舌が良くてきっちり耳に入ってくる声。スキルが高い。
B お話の展開リズムをもう少し早くしてもらえたら……。
E 親切過ぎるんですよね。
B そう。起承転結を丁寧に描いていて、優等生なんだけど。
E 及第点ではなく、突出したもの。その団体の「こだわり」とか。
D ティニウィニのこだわりは「地味に映ろうとも老若男女が楽しめるコメディを作る」なのかも。ただ、冒険が観たいという意見はよく分かります。
F 看板俳優の内藤克広さんが出てこないのもザンネン。
C 優等生的作品は序盤でオチの予想がついちゃうと、観ることが「答え合わせ」になってしまう。
E アイランド前『Towa』とか。
B 展開は面白かった。
C でも、オチが予想出来ちゃった。
B 上手に作っている分、伏線が丁寧だと先は読めるね。
D 私がQSCで毎年楽しみにしているのは、「キャリアは浅くとも、自分達の出来る範囲で一生懸命撮りました!」という熱意が伝わってくる作品。今年で言うと、劇団麺類『アンドロイドの憂鬱』、のんある『青いカーディガン』、BooBy『隣の芝生はいささか青い』、等々。若い俳優の初々しさが好きで、これ、褒め言葉として受け取って欲しいのですが、親戚の子供を観るような楽しさがあります。
F のんある女優陣は劇中で酒盛りをするシーンがあり、でも未成年だからノンアルコール飲料で乗りきったとか。
D 作品の奥底から演劇創作の原風景が垣間見える気がするんです。懐かしいというか、輝かしいというか。QSCのレギュレーションを通じて、出会えて良かったなぁと思える人が今年も何人かいました。
B 経験豊富なベテランには勝てないかもしれないけど、熱量は伝わる。
F 若さのみを抽出して評価することはありませんが、若い人にはどんどんQSCに参加して欲しいです。
ESORABAKO YOSHINO TASUKU PROJECT『ふ・とうめいなひとびと』
B ESORABAKO YOSHINO TASUKU PROJECT『ふ・とうめいなひとびと』、アンティークス『15分間の奇跡』、ストーリーや演出がしっかりしていて、安心して観られる。完成度は高かったし、褒め言葉としてお行儀が良い作品。それと逆ベクトルで面白かったのが、大川祥吾(アイスクライム)『生死を懸けたラブソング』。あれはゲラゲラ笑いながら観た。あのテンションも好き。
A Manhattan96『セロリパラダイスマリネ』も大好き。歌が上手で、踊れて、小道具や仕掛けも良くて、女の子役の女優さんもきれい。ラストも良かった。個人的にかなりツボ。
F 碧さやかさん。
C マイクを付けた俳優と付けていない俳優がいて、声のボリュームのばらつきがどうしても気になった。台詞を視聴者に届けることは劇中の想いを届けることと同義だから。
B 『セロリ〜』はどういう年齢層をターゲットにしているのかな? 観ながら「ターゲットは自分ではないな」と感じちゃって、そうなると途端に興味が薄くなっちゃう。そして何を隠そう、私はセロリ好き。
A 私もセロリ好きだけど、作品は面白かった。セロリサラダと聞いて「美味しそう」と思ったし。
B 酒のアテに最高だよね。
E 『セロリ〜』は玉手箱的というか、楽しい要素を詰め込み過ぎちゃって、どこか突出したモノが欲しかった。
C やはりターゲットはお子さんなんでしょうか?
A うちの5歳の娘は喜んで観ていた。
F 大人も共感出来る内容だと思いますが、「大人から子供まで楽しめるミュージカル」を意識した結果、若干アンバランスな場所へ着地してしまったのかも。
D 劇中に「セロリ指輪」という言葉が出てくるのですが……、あれは「セロリング」にして欲しかったなぁ!
F 惜しい。
B 劇団子供鉅人『王様のヒゲ』のオープニングがすごく好き。序盤が完璧過ぎて、残りのシーンがかすんでしまうほど。
E 本当にそう!
B モノクロで、基本サイレントで、それでも15分観られたのだから、力のある作品だと思う。
E 非常に期待してしまった分、後半が……。
B 上手だったんだけどね〜。
D 「次はどう展開するのだろう?」という楽しみと共に15分寄り添えました。視聴者に解釈を委ねているので、他人の意見が聞きたくなる一作。
B 王様役の俳優は存在感があったなぁ。
F 劇団主宰の益山貴司さん。
A Bさん、子供鉅人は観たことない?
B 観たことないのよ。
A だとしたら本物の評価ですね。知らない俳優に15分間惹きつけられた。
D 逆に知っている人で面白かったのが、私が非常に期待している若手演劇人・國吉咲貴の『規制』。タイトル通り、創作に関する自主規制をモチーフに、國吉さんらしいアイロニカルな視点で描かれています。撮影終盤に無関係な犬の鳴き声が入り混じり、「過剰な自主規制により俳優が疲弊していく」という演出に意図せざるブーストが掛かるオマケ付き。
F 惜しい(笑)。
B 規制に対するアンチテーゼだとして、笑い飛ばすならもっとガッツリ行って欲しいし、問題だと思うならもっと問題提示をして欲しかった。
D 國吉さんが主宰する劇団・くによし組はガッツリタイプではないですね。こんがらがった状況と過程を大事にする人達なので。
C QSCルールから外れちゃうけれど、8分とかの作品だったら面白かったです。
D JUNK YARD『Hello! bystander』はどうでしょう?
A 言いたいことはものすごく伝わってくるけれど……、直接的過ぎるのが。もう少し包み込んで仕掛けて欲しい。
B これも視聴者のターゲット層が気になった。直球がなぁ。
C 特色を持っているのはプラス。あとは自分達の主張をどう視聴者へ手渡すか?
F 直球を投げざるを得ないほどの衝動を刻みつけたかったのかな?
B それならば「パンクバンドが直接的な歌詞をシャウトする」みたいなやり方が合うのかもしれない。同じ内容のメッセージでも、歌い上げるのと、俳優が語るのでは、伝わり方が全く異なる。
E ピュアな志を持った団体だと思うけれど、去年のエントリー作品と比べて今年は情報過多に感じられ、それに振り回されちゃった印象が。
B 加速 de 累加も、同じく情報過多。『サイイッテキ』と『坂の(あった)ある町』の2本。おそらく、やりたいことがいっぱいあるのでしょうね。きれいな画も見せたい、俳優も見せたい、語りたい台詞も沢山。その結果、若干とっちらかっちゃった。15分は長いようで短いし、短いようで長いから、見せたいモノを取捨選択して中心に置かないと。
F ワンアイディアでは足りないけれど、詰め込み過ぎると消化不良。魔の15分間。
D 昨年、JUNK YARDはBITE賞を、加速 de 累加はイーオシバイ賞を受賞したけれど、もしもそれで創作意欲に火がついたのであれば、ちょっと嬉しいです。QSC5でノミネートに残ったことをプラスに捉えて、色々な刺激を受けて欲しい。
B 活動を続けてくれるのは素直に嬉しい。加速 de 累加は確か、現役の学生だったと思う。
D そんなに若いのかー。だとしたら肩に力が入り過ぎても全然気にすることないですよ。このまま挑戦し続けて欲しいなぁ。
D 作品の濃度、強度は大きなポイントですが、ゆるふわに徹して15分を見せきる! というのもひとつの戦略。芝居屋ほりっとれもん『メガライガーピンクの憂鬱』とか。あの女優さんもかわいかった。
F 劇団C-Factoryのえちこさん。
A あれ、定点カメラが惜しい。女優さんにグッと寄りたかった。
D そうなんですよねぇ。とはいえ、定点にも関わらず彼女の愛嬌で15分保たせる訳だから、結構大変なことですよ。技術もセンスも必要だし。
B 今年は美人率が高かった。
C それ去年も言ってませんでした?
D イケメンはどうですか?
E カメリハ&KK『暗黙』に出てくる、映画の主演に抜擢された彼はイケメンでした。
B 正に主役の顔をしていた。
F 木村仁さん。
D 目鼻立ちが整っているという意味ではなく、観る人の記憶に残る、心にひっかかる、という魅力は舞台俳優を引き立てますよね。
E 佇まいから役柄が滲み出ている存在は、やはり覚えやすい。
B 男優さんで印象に残っているのはNew Age Cinema『ありがとう、羽田課長。』に出てくる課長さん。女優さんも美人だけど、あの作品は課長さんが作り上げている。
F 女優さんは田中美甫さん、課長は園田シンジさん。
D 課長さんは、ちょっとイケテツ(池田鉄洋)さんに似ている。
B そうそう。あの課長さんを観るのはすごく楽しかった。個人的にはとても好きな作品で、実は完成度もすごく高いと思う。今回はノミネートに残らなかったけれど、もっと色んな作品を観てみたいと思った。
A つづける『あかいくち』に出ている男性は俳優として良かった。
F 伊藤優佑さん。長野県駒ヶ根市を拠点とする劇団サムライナッツの劇団員です。
D ちょっと高橋一生さんに似ている。
A それはよく分かんないけど。
D 心にひっかかる俳優といえば、公社流体力学の太田日曜さん。作品名が『きもちわるい』で、観劇後はホントに気持ち悪くなるから有言実行の作品。
E QSC常連の公社流体力学。よもや浮気ネタでくるとは。
D 浮気ネタでも『きもちわるい』ですからね。個性健在。
A 最後に。ノミネート当落線上にある作品の「違い」について、皆さんはどう考えていますか?
C 私は、心を動かされたかどうか。完成度に関わらず、心が動いたら○を付けます。
E こだわりですよね。ストーリー、画、音、役者、表情……。そのこだわりが強ければ、賛否が分かれても議題にあがる。QSCは制約が大きいコンテストだと思われがちですが、15分という尺の中で、自分のやりたいことにこだわりを持って欲しい。腹を括ってトライしたことは、きっと運営委員会の誰かの目に止まるはず。
A 何を見せたいか? を追求することは、映像的にどこで寄るか? ということ。具体的に言えば「美人を美人として撮る」ことが非常に大切。せっかくの表情を寄りで撮れないのは大きなマイナス。寄り引きにこだわりがなく定点で撮っている人がいるけれど、そこは考えた方がいい。
B 定点で撮ったQSC作品は、スポットライトを当てない舞台作品と似ている。観る人はフラストレーションが溜まるよね。
A 寄り引きはすごく大事。
F 定点で撮った作品は、それ自体に演出効果を狙った内容でないと意味が薄くなってしまう。逆に言えば、覗き見や俯瞰などが意図的な演出であれば良い訳で。
B 定点だと結婚式のお祝いビデオとか、そういう設定が多いけれど、いま自分が面白いと思ったアイディアが使い古されている可能性について、もう少し意識した方がいい。QSC過去作品にも沢山あるし、QSC以外の映像作品にも多いはず。でも、それを承知で敢えてそこへ飛び込もうというのなら、それもアリ。
F ワンアイディアで立ち止まってしまうのは危険。
D QSCは創作のキャリアも地域も年齢も異なる人達のコンテストだから、演劇歴20年の人もいれば、演劇歴2ヶ月の人もいる。同じ土俵で競い合う以上、そのキャリアの差は当然出るけれど、その差を埋める為に手っ取り早く出来ることとして「過去のQSC作品を観る」があると思います。先人やライバルから学べることは沢山あり、中には反面教師もいるだろうけど、とにかく何かしら吸収出来る。この座談会を読みながら悔しい思いをしている方は、ぜひ他の作品を観て欲しいです。その上で、自分の表現に磨きをかける勝負をしてくれたら……、と思います。
E 舞台作品を沢山観ることは時間もお金もかかってしまう。QSCは同じ条件でエントリーしている作品群を自宅で観比べることが出来るので、希有なショーケースだと思います。是非有効活用して下さい。
A 稽古に時間をかける、構成が練られている、そういう基本的なことも大事。更に、やりたいことを尖らせる、俳優の表情をきちんと撮る、その辺りが当落線上の分け目になるんじゃないかな。
B 繰り返しになるけれど、完成度の高い作品は安心感がある、しかし、不格好でもひとつ光る作品には負けてしまう。
F テーマ、アイディア、ドラマ、テクニックは15分間に詰め込める適量を計算し、それを積み木のように構築しながら、常時たっぷりの情熱を注ぎ続ける。口で言うのは簡単ですが、非常に手間のかかる、大変な創作になると思います。個人的には、やはり独創的な作品が観たい。己の武器と表現欲求に磨きをかけ、キラリと光る一作を!
B 不格好でいいんだよね。飛び出したものが観たい。
D 全国津々浦々、これだけ沢山の表現者が同じ土俵で戦っているのだから、相互的に良い刺激を受けて下さい。
A ……それでは、以上で座談会を終了します。QSC6にエントリーして下さった全ての皆さま、誠にありがとうございました!
(文:園田喬し)
第6回クォータースターコンテスト(QSC6)
優勝賞金:30万円
参加費:無料
応募期間:2017年8月1日(火)~10月31日(火)
ノミネート発表:2017年11月24日(金)
結果発表:2017年12月9日(土)
審査員:鴻上尚史・行定 勲・福原充則・桑原裕子
公式サイト
第6回クォータースターコンテスト(QSC6)
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