2017.7.14

松熊「今観るべき芝居の一つ」/青年座「旗を高く掲げよ」出演者対談が到着



青年座 舞台「旗を高く掲げよ」石母田史朗、松熊つる松
青年座 舞台「旗を高く掲げよ」石母田史朗、松熊つる松
 

青年座「旗を高く掲げよ」に出演する松熊つる松と、石母田史朗が対談した。

 
本作は、歴史上の出来事を題材に独自の視点で骨太な戯曲を創作する劇団チョコレートケーキの古川健が初めて青年座に書き下ろしたもの。タイトルの「旗を高く掲げよ」は国家社会主義ドイツ労働党の党歌からとったのだという。

「模範的なファシストは、模範的な市民でもあり得る」を基本テーマとして、第二次世界大戦下(1938 年~45 年)のドイツ・ベルリンを舞台に、一人の男とその家族が変貌する様を、序章と終章を含む6つの時代を追って描き出す。

本作の中心的な人物ハロルドと、その妻レナーテを演じる石母田史朗と松熊つる松が対談し、戯曲自体や作者・古川健のことなどが語られた。

 

戯曲について

青年座「旗を高く掲げよ」稽古場より
青年座「旗を高く掲げよ」稽古場より

石母田「この前、劇団チョコレートケーキの『60’sエレジー』を観たとき、何か特別な事件が起きるわけじゃなくて、日常生活を淡々と見せていながら、なんかこうじわっとくるものがあったんですよね。今回、青年座の『旗を高く掲げよ』は第二次世界大戦下の話だけども、こちらも普通のドイツ人家庭の日常を描いていて、その日常を演じるのは難しいなって思った。」

松熊「ああ、それは私も思った。とくにプロローグが難しくて「出来るかしら~?」って。」

石母田「それは、僕も本読みでそう思った。劇構造としては分かるんだけど、プロローグのシーンに、あのテンションを持ってくるのって結構大変だって・・・」

松熊「そう!これを…最初にやるっていうのが大変。きちんと背景を作って演らないと、最初から嘘くさい芝居になるかもって…」

石母田「そうそうそう!」

松熊「怖い!正直言って。」

石母田「ほんと怖いですよね。でも芝居の面白さとしては、静かなシーンで始まるより、急に切羽つまった状況から始まるっていうのは、わかるなって。」

松熊「古川さんの仕掛けは大胆だなって思った。」

 

作者・古川健さんについて

青年座 舞台「旗を高く掲げよ」松熊つる松
青年座 舞台「旗を高く掲げよ」松熊つる松

松熊「柔らかいよね。あの柔らかさから『治天ノ君』のような作品が生まれているのが、すごく不思議な気がした。でもお父様が社会の先生で、ご本人も歴史好きって聞いて、だから書けるんだなとは思った。最初は、もっと怖い感じの人かなって思ってた。」

石母田「僕は、根が優しい人なんじゃないかって感じがした。そういうのが戯曲に現れている気がする。作品の題材がエグかったり、キツイことも書いているけど、人間を見る目が優しいなって。」

松熊「言いたいことがちゃんとあると思う。『治天ノ君』を観て思ったんだけど、歴史を通して、ご本人が感じていることを観客と共有したいんだって想いがある気がするんだよね。」

石母田「世代や時代の違いもあると思う。かつて戦争を扱った作品を多くやっていた時って、今よりまだ世の中が明るかったと思うんだよね。そういう時って、戦争ものを、ある意味、他人事としてお気楽な感じで観られるっていうのはあったんだけど。今の社会状況はだいぶ変わってきてるよね。戦争に対する捉え方が違うっていう気がします。」

 

演じる役について

青年座 舞台「旗を高く掲げよ」石母田史朗
青年座 舞台「旗を高く掲げよ」石母田史朗

松熊「私が演じるレナーテは、よく考えない人の役だと思うの。今の日本でも平和だから、新聞を読んだりニュースを見たりしても、あまり社会と関わっていない人って多いと思うんだよね。レナーテは、表面的な時勢は捉えるんだけど深くは考えない。一般大衆の代表みたいな感じの役。」

石母田「目の前の生活や家族のことをまずは第一に考える。みんなそうじゃないですか。でも、この本では、それを別に悪いって言ってるわけじゃなくて。例えば、ユダヤ人のオットー(嶋田翔平)は、自分がユダヤ人であることによって、いろんな差別的迫害を受けているから危機感がある。障がい者のブルーノ(小豆畑雅一)にしてもそう。自分に危機感があるから、ハロルドに対して「こうじゃないですか」って意見を言っていく。一方、ハロルドは「言ってることは分かるんだけど、じゃあどうしたらいいんだ」って、どのように行動したらいいのか分かんない普通の人だと思うんです。」

松熊「他から与えられる情報で、大方の人が言ってるから「良いことだ」みたいに思って満足して……」

石母田「それが普通じゃないですか。義父役(コンラート)の山野さんが「歴史に学ばぬ者は愚か者だ」ってセリフを言うんだけど、大事なことだと思うんです。歴史という、ある意味でいい見本があるわけだから。」

青年座「旗を高く掲げよ」稽古場より
青年座「旗を高く掲げよ」稽古場より

松熊「この作品で描かれている前の時代は、第一次世界大戦があって、世界恐慌が起こってドイツ経済が最悪の時代なんだよね。悪い時代があって、ちょっとでも良くなると、やっぱり今やっていることが正しいってことになる。」

石母田「そうですよ!」

松熊「『これがいいじゃん』って思っちゃうよね。」

石母田「そりゃそうですよ。」

松熊「それが危険だよね。」

石母田「自分たちに直接被害がなければ、つゆ知らずじゃないですか。他人事ですよね。大多数の人の生活が良くなっていけば、その意見は大多数に流れるわけで。ほんと怖いことなんだけど。」

松熊「私が演じるレナーテは、気持ちのどこかで、何か良くない事があるんじゃないだろうかって思っていても、その時、自分の生活が最低限守られていると思ったら、やっぱりそれでいいじゃないと思ってしまうんですね。」

 

お客さんへメッセージ

青年座 舞台「旗を高く掲げよ」石母田史朗、松熊つる松
青年座 舞台「旗を高く掲げよ」石母田史朗、松熊つる松

石母田「僕らが演じる上で一番難しいことなんですが、芝居を観て何かを感じて下さいってことではなく、僕らがそこに生きているっていうことを見せなきゃいけない。それによって、与えて受け取る関係じゃなくて、一緒に考えて一緒に空気を作っていければいいなと思っています。そこを理想にしたい。そして若い人にもぜひ観て欲しいと思いますね。今回の作品のように日常を描いた作品を観た時に、「戦争」や「人間のあり方」を身近に考えてくれるんじゃないかなって期待感があります。」

松熊「今観るべき芝居の一つとして推薦できると思う。考えながら観てもらって、最後のオットーの台詞を聞いて欲しい。その台詞を聞いた時にどう思うか。今この時代に生きている自分を確かめるために、この芝居を観て欲しいなって。たくさんの人に観に来てほしい芝居です。」

 


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本作は7月28日(金)から代々木八幡にある青年座劇場で上演される。
 

(写真・対談取材:小笠原杏緒/青年座製作部、文:森脇孝/エントレ)

公演情報

青年座「旗を高く掲げよ」

作=古川健
演出=黒岩亮

ハロルド・ミュラー(夫)=石母田史朗
レナーテ・ミュラー(妻)=松熊つる松
リーザ・ミュラー(娘)=田上唯
コンラート・シュルツ(祖父)=山野史人
ロッテ(娘の友人)=市橋恵
ペーター・マイヤー(SSの友人)=豊田茂
バウワー(副官)=鹿野宗健
ヘルガ・シュヴァルツ(妻の友人)=渕野陽子
オットー・ワルター(ユダヤ人の友人)=嶋田翔平
ブルーノ・コッホ(障がい者の友人)=小豆畑雅一

2017年7月28日(金)~8月6日(日)/東京・青年座劇場

公式サイト
青年座「旗を高く掲げよ」

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