《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera

METライブビューイング「サーリアホ《遥かなる愛》」みんなの観劇レビュー

《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera
《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera

METライブビューイング「遥かなる愛」みんなの観劇レビュー

本場のオペラを近くの映画館で体験できるMETライブビューイング。
先日エントレではMETライブビューイング「サーリアホ《遥かなる愛》」という作品についてレビューモニターを募集していました。

【レビューモニター募集!】METライブビューイング「サーリアホ《遥かなる愛》」

この時に、『レビューモニターをやってみたい!』と手を挙げてくださった方からのレビューが届きましたので、ご紹介します!

《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera
《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera

メルハバ淑子さんからのレビュー

『遥かなる愛』を観てきました。
海の波を模した数えきれないほどのLED、その間をゆっくりと移動する小舟、岸のようにも見えるクレーン、キャストは3人だけ(合唱はいますが)という意外な設定に、このオペラを初めて観る私は、最初かなり驚きました。
しかし、不思議な旋律を巧みに操る3人の声と繊細なオーケストラに、みるみる引き込まれていきました。その旋律は、どこかアラビアの音楽のようでもあり、祈りの音楽のようでもあり、癒されるものでした。
LED照明は刻々と色を変え、それは画面で観ているだけでも充分美しいのですが、実際に歌劇場で観ることができたらどんなに素晴らしいだろう、と思わせるものでした。
現代音楽だからといって難しい理屈など何も考えずに、ただただ音楽と映像に身を任せて陶酔したいオペラだと思いました。イマジネーションが刺激されます。

《遥かなる愛》 (C)Kristian Schuller/Metropolitan Opera《遥かなる愛》 (C)Kristian Schuller/Metropolitan Opera

町田酔子さんからのレビュー

自らの内で完結する愛の危うさと、その愛が現実と対峙することで生まれる苦しみと喜び。人間の生に伴う普遍的な愛の風景が、ミニマムでクラシカルな物語と、ハイテクノロジーを駆使した演出によって描き出される。
水面に反射する星が煌めくような音楽、舞台中に張り巡らされたLEDの光の揺らぎ、そして感情によって色付く歌声が、それぞれ異なる個性を現しながらも調和する、美しいオペラだった。
また、幕間に挟まれる音楽家、演出家、歌手等のインタビュー映像も充実しており、作品を味わう助けとなった。劇場で鑑賞するときとは異なる面白さがある「ライブビューイング」という形態に、可能性を感じた。

《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera
《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera

うめこさんからのレビュー

スクリーンで観ていることをいつの間にか忘れていました。映像・音響はもちろん、幕間にスクリーンに映し出された本場METでの幕間様子に、いつのまにか自分もニューヨークにいる錯覚に。
愛を隔てているもの、簡単には越えることのできないものとして象徴的に表現されている海。たくさんのLEDライトの演出と、哀しく儚い歌声が限られた舞台上の空間なのに、なんだかとてつもなく広く感じました。
まだ見ぬ相手を想い、その強い想いで海を渡ってきたのに二人は逢うことができない悲劇ですが、その二人の想いは音楽に合わせて表情を変えるLEDライトの海に表現されています。
悲劇で幕を閉じるからこそ心に残る、愛を求めるふたりの歌声でしばらく海の中に取り残されたようでした。

《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera
《遥かなる愛》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera

もーちゃんさんからのレビュー

METライブビューイング『遥かなる愛』を観劇。最先端のオペラづくりをしているMETのオペラをこうして日本にいながら見られることに感動。
これを作曲したカイヤ・サーリアホの繊細な音を指揮者のスザンナ・マルッキが見事に表現し、ロベルト・ルパージュの演出により主人公の男女2人を分かつ≪海≫を舞台全体のLEDで表現しただけでなく、オーケストラの音に添って波打つ光の波に引き込まれた(この辺りの工夫については幕間のインタビューで語られていて興味深かった)。
また、3人の歌い手たちは難曲を情感豊かに歌い上げ涙を誘い、コロス(合唱)が彼らの泡立つような感情を表現する非常に多層的な造りも圧巻だった。きっと劇場で生で観れば≪音と色の洪水≫という感覚に包まれたのではないだろうか?
オペラグラスを用いずともソリストの姿がアップで映されるのがライブビューイングの良いところだが、今回はかなうなら常に舞台の全景が映っていてほしいと思わせる作品だった。もちろん『本物はMETで!』ということなのだろうが、気軽に行けない自分が残念だなとも思った。
他のオペラも続々と上演されるのでまた観に行きたいと思います。

METライブビューイング、次回作は2月4日(土)から「ヴェルディ《ナブッコ》」という作品が上映されるそうですよ。
詳細は公式サイトで!

(文:メルハバ淑子、町田酔子、うめこ、もーちゃん)

企画情報

METライブビューイング

2017年2月4日(土)からは「ヴェルディ《ナブッコ》」を上映

METライブビューイング 公式サイト

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