2016.12.10

QSC5 演劇業界人レビュー 結果一覧です!


第5回クォータースターコンテスト

第5回クォータースターコンテストの演劇業界人レビューの結果を発表します!

 
各地で活動されている演劇業界人8名にノミネート作品11本を視聴して頂き、それぞれの作品に一言ずつレビューを頂きました。
今年もいろんなご意見を書いてくださいました。自分が観た感想を比べてみるのも面白いですよね。

それではどうぞ!!

 

1)常にアグレッシブに世界を挑発するトガッた劇場
  in→dependent theatre
  劇場プロデューサー 相内惟史様
(大阪府)
劇団名
作品タイトル
レビュー
ムームー企画
花が舞う
1ショットでここまで様々なアングルでドラマを展開している点に素直に感嘆します。編集無しでも回想など時系列を飛ばすテクニックが上手いです。ピントの不安定さはあるけど、それすら味のような感じがします。ドラマとしても共感を生む内容です。
アンティークス
にしだ、劇団やめるんだってさ。
過去と現在の二人の女優を二人で演じるスタイルが、その温度差とも相まって面白いです。劇団のありがちな顛末がわかりやすく、またちょっと痛いです(笑)タイトルは違う方が良かったんじゃないかな~。引っ張られて損しそうな気がします。オチはちょっと意外で良かったです。
中野劇団
夕食
シュールですね~。少し怖さすら感じる妻とあっけにとられる夫、夫婦の芝居が見事です。内容がシュールで見事すぎるので、欲を出して画的な面白さをつい求めてしまうのですが、これはこれで完成された作品のように感じます。
劇団フルタ丸
一番デンジャラスな街角で
普段通りの下北沢のまちの風景に、設定の突飛さが際立ちますね。バカバカしい内容ですが、最後のぶっつけっぽいシーンがアクセントになっていますね。おそらく一般人であろう、街の人がまったく動じないのが、流石演劇の街って感じで面白いです。
藤原佳奈(mizhen)
マルイチ
まさか歌いだすとはww 心の声を吹き出しはベタですけど良いですね。女性サイドになった時に鏡でちらりと男性が映るのが良いです。まさかの両方子持ちって、あり得無さそうなシチュエーションだけど長編でもコメディとして成立しそうな面白いテーマですね。
緑茶麻悠
Wind Chime
芝居しているところと、芝居してないところの入れ子構造、両方のリアルの谷間が見え隠れする様が見事です。劇中でも言及している、芝居ってなんだろう?っていう事を考えさせられてしまいますね。一見ドキュメンタリーにも見える二人の芝居がナチュラルにそれを考えさせます。カメラワークも含めてレベル高過ぎ!
JUNK YARD
Pink of
スタートのシチュエーションが特殊過ぎて、でも二人の絡みが僕の身近にいるアイドル好きの女優たちとまんまで、リアルで面白い。と思ってたら深い方向に進んでいって、想像の上を行きました。もうひとひねり欲しい感じもありますが、ラストの前向き感は好きです。
とりめがね
風俗行ったら、死のうと思
天井の文字、セッティング大変そうですね…。浴びせられた言葉が空中に浮かぶ様とそれを想い出す目線の様に追うカメラワークはなかなか。ただ、いくら免疫なさそうなタイプの登場人物でも、ちょっとオチは単純すぎるかな?という気がしてしまいました。
いかっこ
拈華微笑
やろうとしている事はわかるんですけど、ちょっと個人的には共感できませんでした。前半の部分でのれないと、後半が一人語りのダダ流しに感じてしまう危険が。内容のトーンと合わせたり、ロケの都合とかもあると思うのですが、画面も暗過ぎて重く観ずらい印象が強くなってしまっている気がします。
祝大輔 &「3.14ch」ムランティン・タランティーノ合作映画
沈黙する◯◯の悪戯
バラバラに見えたシーンが、繋がっていく後半、いわば走馬灯的な展開と謎のダンサーたちが言いようの無い不思議なカタルシスをもたらします。ただ、ボレロはかけ切って欲しかった!ある意味ハッピーエンドと言えるし、折角の「海の見える家」なので、ラストの屋外は晴れた日中や夕陽で観たかった気がします。
加速 de 累加
PEEP
「そういうとこやで」って怖いセリフですね…。自分でも決め台詞として使ってみたくなります(笑)SNSの監視とかいまどきのテーマですが、この弟が怖いですね。何したいのか、姉との関係とか、見えそうでまるで見えない感じ。実際のところが全然わからない感じ。

 

2)演劇振興と演劇による地域の活性化をめざす
  公益財団法人 北海道演劇財団 劇場運営グループ
  シアターZOO支配人 阿部雅子様
(北海道)
劇団名
作品タイトル
レビュー
ムームー企画
花が舞う
まるで映画を観ているようなカメラワーク。お婆様が「10年後」と指定している点など、いくつか展開に若干の強引さを感じました。もう少ししっかり創り込んだバージョンを観てみたいです。
アンティークス
にしだ、劇団やめるんだってさ。
QSCにぴったりの作品(アイデア)だと感じました。劇団主催者のダメ男っぷりが良かったです。若い頃の女性のフレームイン・アウトが雑で残念。終わり方ももっと丁寧だと良かったです。トロンボーンの演奏は、無くても良かったような…。退団したい人は、させてあげてください。
中野劇団
夕食
息が詰まるような夫婦の食卓。いい作品ですね。定点カメラでも全く飽きずに観れました。裏ごししたカレー、早く食べてあげて欲しいです。
劇団フルタ丸
一番デンジャラスな街角で
小さい頃、あれこれ妄想しながら住んでいる町を歩き回って遊んだことを思い出しました。終盤、アドリブ的内輪ウケ的な部分が残念。下北愛はよく伝わりました。
藤原佳奈(mizhen)
マルイチ
変な柄のネクタイ、アナログ過ぎる吹き出し、突然の歌。最高です。2回目の歌で、マイク持ってるところも大好きです。
緑茶麻悠
Wind Chime
芝居ネタの作品はあまり好きではないのと、途中で展開がなんとなく読めてしまうのが残念でしたが、映像がキレイでとても良かったです。
JUNK YARD
Pink of ♡
冒頭、冷蔵庫に閉じ込められてから助けられるまでの経過時間など、様々なものの距離感に違和感を覚えました。冷蔵庫から飛び出てくるところなど、あまりリアルじゃなかったですね。
とりめがね
風俗行ったら、死のうと思
タイトルからほぼ展開が読めてしまって残念。ストーリーにもうひと捻り欲しかったです。
いかっこ
拈華微笑
風船の演出意図があまりよく分かりませんでした。ラストの歌、もう少し先まで収録できると良かったかな、と思います。ロケーションが素晴らしいですね。
祝大輔 &「3.14ch」ムランティン・タランティーノ合作映画
沈黙する◯◯の悪戯
ちょっとゴチャゴチャし過ぎている印象。ドクター&ナースのエキセントリックな雰囲気から、もっと弾けた内容を期待してしまいました。音楽の力でまとまった感じもあり、改めてボレロすごいな、と。
加速 de 累加
PEEP
何度観てもちょっとわからない感じが絶妙に気持ち悪くて不思議な作品でした。もう少しだけ腑に落ちたい、と思って繰り返し見てしまいます。

 

3)元シアターガイド編集長。現在は長野のアートとカルチャーをもっと楽しむメディア Nagano Art+ を運営
  今井浩一様
(長野県)
劇団名
作品タイトル
レビュー
ムームー企画
花が舞う
亡くなった人のものを整理するのは大変だよね。うちは、おかんが亡くなったとき、うちの親父はバンバン捨てちゃったけど、僕は無理なほう。しゃれたおばあちゃん、いいなあ、こんな仕掛け。階段の上り下りも含めて、おばあちゃんへの思いが伝わってくる。けど、つながりの根本はなんだろう。カメラとか花びらとかおぼんとかちょっと気になる。カセットテープとレコーダーの強さを感じるだけに。
アンティークス
にしだ、劇団やめるんだってさ。
昔ね、付き合っている彼女の目を見てダメだしできない演出家を見たことがある。なんか普段は偉そうにしているんだけど、カリスマもプライベートになるとデレデレ、ダメダメになっちゃうのかなあ。この作・演出のもとじゃあ、きっと面白い作品はできないんだろうなと伝わってきちゃう。10年もったんだからすごいじゃん(苦笑)
中野劇団
夕食
夫婦関係の不穏は伝わってくるけど、もうずうっとずっと毎日毎日カレーだったんだ。爆笑してしまいました。カレー色の画面はそのせいかもね。でも、ここは、旦那さんに受け入れてほしいなあ、だって、奥さんから愛がビシビシ伝わってくるもんねー。明日もカレー、明後日もカレー、もうそれが日常なんだから、その日常が続く幸せを。
劇団フルタ丸
一番デンジャラスな街角で
『ソモサン・セッパ』は漢字で「作麼生・説破」と書くらしいですよ。これ、下北沢で本当にやったら面白そうですよね。やすっぽい小道具も大好き。最近下北沢行ってないなあ、田舎のおじさんになっちゃったから。のんだくれて徘徊したいなあ。しかし、お姉ちゃんはどこへ向かっていく?
藤原佳奈(mizhen)
マルイチ
すごーい早い晩御飯だもん。夜はこれから始まるんだからね、ゆっくりたっぷり、いろいろ話せばいいさ。でも、お互い子供が待っているから、それも気にかかっているのかな。いくつになってもつくろうよねえ。でも優しくていいなあ、このテイスト。アナログに映像を楽しく遊んでいる姿勢が大好き。こういうミュージカルって舞台でも楽しいだろうに、ぜひ。
緑茶麻悠
Wind Chime
目は口ほどにものをいうというけれど、なんだか、くちびるにひたすら惹きつけられました。くちびるの動きに、込められた思いって出るんだなあ。どこまでが芝居でどこまでが本当で、という嘘が悲しいんだけど、なんだか無邪気な時間が永遠に続いていくような心地よさも感じました。
JUNK YARD
Pink of
意味わかんないけど、なんか、とってもわかる。きっと、誰にもわからなくても自分には確信があるってことがあるもんね。ここまで振り切ることができるのであれば、誰にも共感されなくてもよいのかもしれない。理解できないけど、それはそれでいいんだ。世の中いろいろだ。
とりめがね
風俗行ったら、死のうと思
なんでもいいんだ、生きていけるのなら、それがどんな理由だって。宝くじの2万円なんかより、もっともっとすごいエネルギーになる。なんか、新しい世界の扉開けたじゃん。次はお風呂に入って、さらに新たな扉を開けよう!
いかっこ
拈華微笑
そっと誰かが見ていてくれる、支えてくれていると思えばこそ、ときには、全部を大声でぶちまけることもできるかもしれない。その誰かが、ふっと隙間ができた心に、以心伝心、無言のうちに真理を植え付けてくれる。だからその誰かに向けては、心を開いておきたい。家族ならなおさら。
祝大輔 &「3.14ch」ムランティン・タランティーノ合作映画
沈黙する◯◯の悪戯
こういうの、「もう、田舎のおじさんになっちゃったからさ」と思わず逃げたくなる、くらい面白いから、しょうがない。たぶん一番錆びてしまったのは僕の言葉で「すげえねえ」と唖然とするしかないのだ。情けな。公演を観たくなったので、ツイッターをフォローしてみた。ただただ混沌のなかから、湧き上がるパワーだけで生きていかれるような気がする。
加速 de 累加
PEEP
怖。姉弟だから、また怖。10年ってなんだ。何かあったんだ。すごくすごく妄想が膨らんでいく。そのあいだの自分の動向が目の前であっけらかんと語られたら、返事もできないなあ。この行き過ぎって歯止めがどこでかけられるんだろう。語られない10年前に遡らないと解決できないのかな。いやあ、あっけらかんとサスペンス。怖い。

 

4)名古屋を中心とした東海地区の演劇文化振興普及、活性化をめざす
  名古屋演劇教室
  代表 小熊ヒデジ様
(愛知県)
劇団名
作品タイトル
レビュー
ムームー企画
花が舞う
シーンの転換もうまいし、シンプルながら随所に工夫が見られ、好感が持てました。もっと引いた画も観たいなあと思ったのと、最後の写真が本人じゃなかったら、もう一展開観られるのかなと思いました。
アンティークス
にしだ、劇団やめるんだってさ。
この設定でどこまで遊べるのかに大きな興味が湧きます。二人の女優さんの表情にも、なんだか惹かれるものがありました。
中野劇団
夕食
途中、何度か軽く吹き出しました。さざ波も立たない極度な緊張感を最後まで持続させられたら、さらに劇的に面白くなったんじゃないかと感じます。それを観てみたい。
劇団フルタ丸
一番デンジャラスな街角で
こういう馬鹿馬鹿しさは嫌いじゃないです。もっと磨きをかけて馬鹿馬鹿しさを極めて欲しいです。街ロケなところも好きです。
藤原佳奈(mizhen)
マルイチ
優しさを感じました。子供が登場した時は、思わず微笑みました。そして、とても誠実さを感じます。
緑茶麻悠
Wind Chime
ラスト近くになって急に引き込まれました。前半に繊細さとスリリングさをもっと感じられたら、さらに素敵な作品になったように思います。
JUNK YARD
Pink of
ロケ場所が印象的で、「こんなところで一人でアイドルごっこしてる」というセリフを聞いた時、一瞬、壮絶なモノを感じました。その壮絶さをもっと味わいたいと思いました。
とりめがね
風俗行ったら、死のうと思
あの貼り紙には胸が痛みます。些細なキッカケが生きる力になるのかもしれませんが、その些細さにもっと共鳴したいと思いました。
いかっこ
拈華微笑
俳優の佇まいを大切にしたい作品だと思いました。小道具やロケーションやモチーフに思いを感じるので、大切にブラッシュアップしてみて欲しいと思いました。
祝大輔 &「3.14ch」ムランティン・タランティーノ合作映画
沈黙する◯◯の悪戯
ライブ感があり、観せ方も演技も楽しかったです。空間を上手く使っているし、一本の芝居を15分に凝縮、ダイジェストしたような観ごたえも感じました。
加速 de 累加
PEEP
随所に怖さが演出されていて、最後まで惹きつけられました。俳優の演技や表情も良く、面白かったです。

 

5)演劇と映像のライブ性について研究
  慶應義塾大学教授、日本演劇学会副会長
  小菅隼人様
(東京都)
劇団名
作品タイトル
レビュー
ムームー企画
花が舞う
ぶれるフォーカス、揺れるカメラは作為的かもしれないがリアリズムにはそぐわない。モチーフに新鮮さはないが、「蘇る過去」は永遠のテーマであり、情感が画面に現れていた。花びらがどこまで効果的だったかは疑問。
アンティークス
にしだ、劇団やめるんだってさ。
二人の女子の10年のコントラストはもっとはっきり出た方がいい。ありふれたドラマを、魅力的に見せるのは、俳優自身の魅力とそれぞれの心の動きが観客に分かることが必要だ。アイディアはとても良いと思う。
中野劇団
夕食
緊張感のある会話がよかった。俳優も上手だと思った。ポジションを固定しているのも効果的だった。ドラマとしての広がりを感じさせる作品ではあったが、もっと感情が画面に現われていてもいいだろう。
劇団フルタ丸
一番デンジャラスな街角で
内輪受けの町、若者が隔離されて無害化されていく町としての下北沢を映像全体として表現していると受け取った。意味もなく面白かったが、深読みしたくなる作品だった。姉妹の臙脂(えんじ)色の衣装が他からのコントラストとして際立っていた。残りの男性キャストはやり過ぎですね。
藤原佳奈(mizhen)
マルイチ
こういう、ありふれたテーマで、均整のとれた構造の作品は好きです。俳優の演技に集中して楽しめるからだ。男優には好感のもてる生真面目さが見て取れたし、女優には子持ちシングルの色気がある。無理やり引き出された風の二人の子役の恥じらいもいいでしょう。
緑茶麻悠
Wind Chime
カメラワークがとても煩くて不快。姉妹の恋愛というテーマにも、もっと丁寧な手続きと描写が必要だろう。カメラと対象の距離感が中途半端で、それは、テーマと描写の中途半端にも通じている。
JUNK YARD
Pink of
アイドルというテーマ設定が現代的でもあり、ノスタルジックでもあり、ありふれてもいるが未解決の問題として面白い。不法投棄物と森(多分樹海)とアイドルという組み合わせも良いだろう。キャラクターがもっと掘り下げられればよかったね。
とりめがね
風俗行ったら、死のうと思
男の子の深刻さは伝わってこなかったが、隠し方の上手な作品だと思った。女の子はとても上手に表現されていた。紙に書かれた台詞は、その書き方も工夫される必要があっただろう。
いかっこ
拈華微笑
きれいな画面だと思った。お姉ちゃんの歌がとても上手で感心した。妹の方のセリフ回しと演技にもう少しメリハリが欲しい。演劇部、いじめ、死・・・モチーフとして、あまりに定番ではないだろうか。
祝大輔 &「3.14ch」ムランティン・タランティーノ合作映画
沈黙する◯◯の悪戯
今回のエントリーの中で一番良いと思った。異時同図法的な手法と滅茶苦茶な世界観が好ましい。表現としてもっと徹底すれば一家をなせると思う。
加速 de 累加
PEEP
若者が自分の問題を真摯に見つめたリアリズムを感じた。女優がとても印象的で、感情の動きがよく見てとれた。他の作品を含めてどうしてこんなに食卓の場面ばかりなのか。この作品ばかりではないが、伝統的なリアリズムのステレオタイプに捉われすぎている。

 

6)演劇で世界と静岡をむすぶ
  SPAC – 静岡県舞台芸術センター 芸術局長
  成島洋子様
(静岡県)
劇団名
作品タイトル
レビュー
ムームー企画
花が舞う
全体的に俳優の演技力がもう一歩。特に回想シーンが<泣かせよう>という種類のわざとらしいものになってしまっている。演劇と映像というより、どちらかというと短編映像作品というおもむき。
アンティークス
にしだ、劇団やめるんだってさ。
カメラワークが過去と現在を行き来するストーリー展開、内容に効果的に活かされている。ただタイトルの、やめるのは「劇団」である必要がなく、単なる男女の恋愛の別れ話。「劇団」であるならば、タイトルのオリジナルになった作品(「桐島、部活やめるってよ」)のように、群像劇で描いてほしかった。
中野劇団
夕食
固定の画面で、俳優の会話と間で展開させるのは台本の面白さにあるのだろう。舞台であればカレーの臭いも実際にさせることもできると考えると、映像だと逆に伝えることができない部分があるというのは逆説的でおもしろい。
劇団フルタ丸
一番デンジャラスな街角で
最近よく上演される観客参加型の「謎解き脱出ゲーム」や「街あるき演劇」を客観的に映像化した作品とも捉えられ、また下北沢の街を紹介するPVにもなっているという点で面白い。街中を歩きながらの場面についていくカメラワークもリズム感があってよかった。
藤原佳奈(mizhen)
マルイチ
吹き出し、オリジナルの歌など15分間飽きさせない工夫が随所にほどこされ完成度が高い。俳優2名の演技にも好感が持てた。時計にカメラがアップすることで場面転換が行われるが、夕飯デートにしては時計の時間設定が微妙に早くないかと思った。
緑茶麻悠
Wind Chime
画質も音もとても美しく、短編映画のような印象を受けた。現実の会話なのか台本なのか…複雑に絡み合う展開を、ふたりの表情の細かい変化を追いながら面白く観ることができたが、少々長くも感じさせられた。
JUNK YARD
Pink of
展開や人物の設定がわかりやすく、現代に生きる若者らしいモチーフを使ったあたたかいストーリー。しかし、なかなか入り込めなかった。道具の細部やカメラワークにもう少し工夫やこだわりがあるとより良くなるのではないかと思う。
とりめがね
風俗行ったら、死のうと思
天井を使った演出がとても効果的で、本作の見所のひとつ。カメラワークや音楽が、優しく主人公に寄り添っている様子も良かった。場面転換の仕方にもう少し丁寧さがあると、なお観やすくなったのではないかと思う。
いかっこ
拈華微笑
周囲の自然や風の音、水の音を存分に生かしており、爽やかでどこか懐かしさを感じさせる作品。カメラワークが落ち着かず、ピントが合っていない箇所が多かった。あえての演出なのかもしれないが、少々観にくくも感じた。
祝大輔 &「3.14ch」ムランティン・タランティーノ合作映画
沈黙する◯◯の悪戯
一部屋にこれだけ多くの場面を盛り込んでカメラが回っていく方式は、お見事だった。このコンテストならではの面白い作品だと思う。最初から最後まで、とにかくシュールな展開に面食らいながらも、作品の持つ強烈なエネルギーに引っ張られた。
加速 de 累加
PEEP
全体的にとても上手くできていて良作だと感じた。意味ありげな間、緩急をつけた緊張感のある演技、狭い空間を効果的に見せつつ飽きさせないカメラワークなど、バランスが良かった。設定として、現代ならではのギミックを入れているのも好ましい。

 

7)福岡・九州の地域舞台芸術文化を支援するNPO法人
  FPAP(エフパップ)
  プロデューサー 森國真帆様
(福岡県)
劇団名
作品タイトル
レビュー
ムームー企画
花が舞う
流れるように動くカメラアングルや灯りの色使いが非常に凝られていて見やすく、良かったです。ラストの花が舞う演出には、意表をつかれました。QSCの動画編集禁止というルールを感じさせず、ショートムービーとして完成度が高い作品でした。
アンティークス
にしだ、劇団やめるんだってさ。
始まって10秒、ドラマの始まる予感を感じさせてくれました。出会いと別れを同時並行させる構図は、恋愛ものっぽいなと思っていたら、やはり劇団の話は男女のもつれに。台詞はよく作り込まれているので、恋愛ものとして既視感がしてしまうのがもったいないです。
中野劇団
夕食
15分という限られた時間を贅沢に使い、それでいて無駄な間がないところが見事です。「旦那が夕食に興味がないのでは?」まるで、発言小町のトピックをドラマにしたような着眼点や、カレーで愛を確かめるという旦那さんにとっては到底理解しがたいであろう方法に、くすりとしました。
劇団フルタ丸
一番デンジャラスな街角で
バカバカしくも思える設定が面白くて良いのですが、ファイターたちがクイズ王の称号に対してあまり執着していないので何を目指しているのかがわかりにくく、惜しいです。最後はアドリブっぽくなっていましたが、真剣勝負にすると感動的な作品にもなるのではないかと思います。
藤原佳奈(mizhen)
マルイチ
バツイチ子持ち同士の夫婦のデートというだけで物語はほとんど進展しないけれど、そのシンプルさが非常に良かったです。俳優の演技も魅力的で、見ている人を飽きさせずに最後まで楽しませてくれる作品でした。
緑茶麻悠
Wind Chime
ストーリーも映像も大変きれいでした。映像でないと出せない生っぽさも感じました。同性の、姉妹愛という難しいテーマに、「芝居」を絡めることで爽やかにみせていると思います。
JUNK YARD
Pink of
雑木林の中にアイドル。似つかわしくなさが良いですね。せっかくなら衣装やダンス、音楽をもっと派手にして、心中の重みとのギャップを思い切り出しても良かったかもしれません。
とりめがね
風俗行ったら、死のうと思
立ち直るきっかけなんて、案外ささいなことなのかもしれませんね。天井に貼っている言葉とLINEのメッセージで男性の過去や動機を説明する点は面白いです。言葉だけでなく演技でも男性の心情を見せると、見ている人を飽きさせないと思います。
いかっこ
拈華微笑
昨年同様、のびのびとした演技が印象に残ります。様々な思いや記憶の断片の羅列するだけでなく、見ている人を引き込む一工夫が欲しかったです。最後に姉妹の過去が明らかになりますが、全体を通してもう少し二人の関係に焦点をあててもよかったのではないかと思います。
祝大輔 &「3.14ch」ムランティン・タランティーノ合作映画
沈黙する◯◯の悪戯
中盤から妖精のようなものが大量に入り乱れ一見、混沌として見えるのですが、妻と出会った頃から死ぬまでという軸がはっきりとしているため、意外とスッキリと観れる作品でした。死ぬ間際にスケベなシーンばかり思い出している彼にはツッコミを入れたくなりますが、とても幸せな昇天を迎えたのだと思います。
加速 de 累加
PEEP
他人に見られていることをわかっているはずなのに、身内からSNSの投稿について言及されるとドキッとしますね。日常感あふれる住まいで撮影されていることで、気味悪さが増しているように感じます。最後まで見た後に、冒頭を見返すと、彼の表情の意味がわかってゾワッとしました。

 

8)ことばと映像の協同作業を教育と町の現場で実験中
  慶應義塾大学教授、
  居場所「カドベヤで過ごす火曜日」運営委員会代表
  横山千晶様
(神奈川県)
劇団名
作品タイトル
レビュー
ムームー企画
花が舞う
空間を最大限生かし、色の使い方で現実と過去とを共存させる。この作品は作者が心から作らざるをえなかったものではないか。その意味では演技の「ぎこちなさ」がかえって個人の真摯な表現となっている。「深い意味」を追い求めようとする批評の在り方に対する批判ととりました。
アンティークス
にしだ、劇団やめるんだってさ。
斬新なアイディア。異なったアングルを多用すれば、女性の変化を深く表現できたと思うが、あえて男性を中心としたカメラの平行移動に徹したとみた。それならもう少し台本にスピードと緊張感があってもよい。そして4人目のマスターとの伏線はいらない。「におわせる」だけで十分。映らない人の存在感って大切です。
中野劇団
夕食
ずっとこのテンションで行ってくれ~と祈りながら見ていた。その点見事にクリア。間が多いので、やがて「10か月も?」「なんでハンバーグのにおい?」と余計な疑問がわくのも思うつぼなのでしょうか。無理のある構図より、思い切って着席から奥さんの背後からを定点にして撮るのもよかったかも。
劇団フルタ丸
一番デンジャラスな街角で
カメラさんの体力と技術に脱帽です。最後が素で行くのならそこでこそ演者(赤いドレスと青い靴のセンスグッド。他の人の衣装のチープ感と素敵なコントラスト)は頑張ってほしかった!ゆりあ、下北沢への愛が今一つ足りないぞ!私だったら最後の演技では「勝ち」にできません(笑)!
藤原佳奈(mizhen)
マルイチ
2重、3重のはぐらかしにしてやられました。「時計、進んでないじゃん」と思ったら視点が入れ替わっただけだし、「鏡に思わずスタッフが映っているじゃないの」とつっこんだら、それは「娘」が出てくることの前触れだったりとか(かな?)。作りこみすぎないところもグッド。
緑茶麻悠
Wind Chime
演技も美しさもカメラ映りも最高の二人の芝居魂の戦いから一時も目が離せなかった。どっちが勝つか。お姉ちゃんがゲームを降りてしまったのは台本通りなのか、それとも「降参」だったのか、いまだにわかりません。音声の後どり部分で緊張がちょっと途切れたのが残念。
JUNK YARD
Pink of
冷蔵庫はこわい。15分が究極のブラックになるのかと思いきや結局きれいにまとまった。そしてあんまり何も残らない。JUNK YARDさんのほかの作品もいくつか見てみたら、生と死をめぐる世界観が見えてきた。でも「ひっかかるもの」がない。もうひとひねりほしいです。
とりめがね
風俗行ったら、死のうと思
カメラの動きが無駄なくて、音の使い方、演出もうまい。中田さんへの共感度はじわじわと増すばかり。ただ私はいじわるだからか、この後のことが気になる。中田さん、結局救われないのでは。割れたスマホの画面が不気味。思い込みすぎでしょうか。
いかっこ
拈華微笑
風の音、波の音、暗い画面、最高の舞台が用意されました。最近あったいじめ事件とも相まって社会的な作品になっている。ただ、死者と語るという設定と本人の抱えるフラストレーションとの関係が見えにくい。
祝大輔 &「3.14ch」ムランティン・タランティーノ合作映画
沈黙する◯◯の悪戯
おっしゃるとおり、見えている物以上のものが満載だから、作品として見るのがとにかく疲れました。とはいえ、映像作品を作る現場ってこんな感じなんだろうな、というお祭り観をそのまま映像にしたのでしょう。作っていて楽しかったでしょうね。
加速 de 累加
PEEP
今回の中で一番気に入った作品です。こなれたセリフ回しと身体表現で演劇でも十分楽しめる内容を、見事に映像作品として成り立たせた。映像だからこそ写される物体やちょっとした体の動きが大きな意味を持ったり、奇妙にまとわりつくセリフが音として生きてくる。

 
ということで、演劇業界人レビューの発表でした!
ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました!

 

(文:森脇孝/エントレ)

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