2015.3.19  129

不条理劇とは・・・。 別役実 本人が語った「演劇」をつくる意味


別役実

 
別役実フェスティバルの記者会見が行われ、
劇作家の別役実、演出家の鵜山仁、俳優の林次樹が登壇した。

 
別役実フェスティバルは18団体が参加し、
約1年半に渡って別役作品を上演するというフェスティバル。
文学座、青年座、円、昴などの老舗新劇劇団が
ゆるやかに連携して開催するという珍しい試みだ。

このフェスティバルの記者会見に、
別役実氏本人も参加。
フェスティバルへ期待することや、自身の新作の事、
さらには「不条理劇」について、そもそも「演劇」についてまで語られた。

以下は記者会見のレポート。動画はページ下に掲載した。

 
フェスティバルを開催することになった経緯は?

鵜山仁

鵜山「僕は高校時代から別役さんに憧れていて
もうかれこれ50年近くになるんですけど、
だけど現場では ほぼ別役作品と関わる機会が無くて
なんとか別役さんと同時代を共有したいと。

この際、文学座に所属している僕が昴で演出させて頂くということもあるんですけど、
劇団、集団がゆるやかに横につながって
小さな空間がささやかに連携できればと思って。

18団体、19演目、約1年半、
フェスティバルをゆるやかにやっていこうと思っています。」

別役実

 
別役「子供時代から病気したこと無かったんですけども、
ここへきて突然 パーキンソン病という得体の知れない病気にかかりまして、
初めての大病だったんで、我ながらビックリして
かなりショックだったんですね。

で、退院してきたらこの話を伺いまして、
僕の芝居を並べてやってくださるという話で、
大変勇気づけられまして。

これが無かったら、もしかしたら推理小説でも
書いて過ごそうかという感じがあったんですけども、
でも、芝居やる気になったんですからね。」

 
今回のラインナップについて

街と飛行船

別役「街と飛行船」なんていうのは今回が初めてじゃないかと思うんですが
それ以外はだいたい良くやられている脚本で、
初期の悲劇的なものじゃなくて、わりと喜劇的なものが多くなっているなんてのは
だいたい感じ取れまして、
まあそれは、今日的な傾向じゃないかと感じ取れます。

テーマとかそういう難しい事じゃなくて、
芝居の感触みたいなものが 軽いか、重いかという感覚で言えば、
まあちょうどいい軽さなんじゃないかなと。」

 
執筆中の新作について

別役「尼崎事件を材料に取った『あの子はだあれ、だれでしょね』というのが
タイトルになっているんですけども。

柳田国男の『妹の力』のテーマを頂いて、
女性が巫女として男性社会の中で主導権を取って犯罪を起こすという、
まあ古くからあるテーマですけども、
それに照らしあわせて、あの事件を展開してみようと。」

 
このフェスティバルに期待することは?

別役「僕の芝居は大変気の毒なんだけど、なかなかお金にならないんですよね。
小劇場でやる芝居が多いですし、だから経済的に大変苦労されるんじゃないかと思うんです。

ただ僕は、芝居っていうのは200人くらいの小屋でやるのが
正当な芝居だという風に考えてるんで、
小劇場の芝居がですね、少しでも定着するようになって、
それに対する刺激になればうれしいと思っていますね。

大変でしょうけども、そういうふうな形で
芝居の一番のすそ野を広げて頂ければいいんじゃないかと考えております。」

 
不条理劇について

鵜山仁、別役実

別役「僕は不条理劇の作家と言われているんですけども、
最近は不条理ということをさほど考えないというのがありまして、
60年代のベケットやイヨネスコが我が国に紹介されていた当時は
不条理であることが一つの主張であったり、反逆であったりといった
要素があったんですが、
70年代、80年代を経て、そういう要素は無くなってきたんですね。

若い人たちの脚本を読むと、
不条理であることが自然に入り込んできているというのがありますね。
まあ、そういう意味から言えば、
不条理というのは、ある程度の役割を果たしつつあるんじゃないかと、
今は考えております。」

 
演劇について

別役「演劇そのものの形式がですね、
僕は反社会的だっていう感じがするんですよ。

観客の集め方だとしても、
1回200人だけにしか見せられないというのが
芸術というものが持っている限界という構成を
如実に表しているという感じがするんです。

ですから映画だとかテレビだとかで
100万人にコピーして見せるのが消費財だとすれば
演劇・舞台というのは、
むしろ消費できないことに有効性を見出すメディアになっていると思うんですね。

それから伝達の方法も、
コピーして100万人にいっぺんに見せるんじゃなくて、
1回1回50人ずつの、あるいは200人ずつの観客に見せて
それが波状攻撃のように伝播していく。
伝播していくことによって伝わっていく。

この形式を持つことによって、
演劇というのは消費財じゃなくて、
蓄積される文化財になっているんだと思うんですね。」

 
別役実フェスティバル

別役「それから表現の仕方もですね、
電気の力によって拡大するのではなくて、
等身大の人間が機械によらない声、音声、しぐさによって
伝達しうるものを伝達する、という伝達の仕方も
反近代だという感じがするんですね。

近代が作った合理性とか拡大性とかを排除しているという感じがするんですね。

そうすると、演劇が持っているあらゆる表現の方法にしろ伝播の仕方にしろ
そういうものが全て反近代で反逆的だと考えて、
演劇を浸透させることによって、
現代が陥っている無味乾燥性というか、非人間性とかですね、
そういうものを解消できる手立てになっているんじゃないかと
そういう風に考えてるんですけどね。」

 
別役作品の魅力とは?

鵜山仁

鵜山「僕は、先程別役さんがおっしゃった
【別役さんの芝居はお金が儲からない】という所に興味がかなりあって。

話はずれちゃうんですけど、
このフェスティバルの話を持ちかけると、
みなさん、ややほっこりした顔をするというか、
やや含羞をはらんでほほえんでくれるというか
これで金儲けをしようと思わないというか、そういう発想にならないという
面白いところがあって。

言ってみれば無償性の演劇というか
引用しちゃいますけど、【消費される事を拒む】というか。
別役作品のそういう体質に興味があったということですかね。」

 
林次樹
 

「僕は30年・・・いや、もっと前に別役さんの芝居を観ていて
やりたくなって、この世界に入ってしまったようなところがあって。

お亡くなりになりましたが、木山事務所の木山さんが別役さんの作品を
大変たくさんやられていて、
その木山さんが『別役さんは天才だからね。別役さんの脚本はわからないよ』
というふうに言っていて、僕もそう思っていて、
僕らが解釈なんかきちんとできるわけないんです。

だからこそ逆に、作る集団や演出家の考えによって
いろいろな解釈ができる奥深さとか懐の深さみたいなものがあって。

本当は別役さんの中にひとつの答えがあるのかもしれませんが、
僕ら凡人はああでもない、こうでもないと探しながら
答えのない旅を続けられることが魅力で、ずっと続けているのではないか。

演劇を続けてやめるまで同じことだと思うんですが、
だから別役さんの作品を続けているんじゃないかと思うんです。」

 
別役さんが今後やりたいことは?

別役実

別役「平常心。平常心ということと、戯曲を書くということは
あまり並び立たないんですよね。
年をとった場合にどういう戯曲を書くべきかについて
平常心で戯曲を書くことができるかどうかということを
確かめたいという感じはありますね。

戯曲をやめてエッセイを書くんだとすればですね、
平常心でも書けるわけなんですけども
平常心で芝居を成立させることができるかどうかということを
わりと考えています。

だから、そういうふうに芝居が向いていく可能性は
あるんじゃないかと思います。」

 
消費される事を拒むメディア「演劇」というくだりが
とても印象的で、素敵な表現だと感じたがいかがだっただろうか。

現在執筆中の新作も気になるところだが、
さっそく3月21日(土)から上演が始まるので
別役実の書いたものに興味が湧いてきた方は公式サイトで
スケジュールをチェックしてみてほしい。

別役実フェスティバル 公式サイト

 
別役的宇宙をめぐる スタンプラリー付きパスポート

別役実フェスティバル パスポート

このフェスティバルの特別企画として
別役実フェスティバル パスポート が公式サイトで販売されている。

小冊子「別役実の軌跡」と、スタンプラリー用の台紙のセット。
観劇の際にパスポートを提示すると観劇料金の割引や記念品がもらえる。
また、スタンプがたまれば交流プロジェクトへ無料で参加できるなどの特典もある。

小冊子には鵜山仁、野田秀樹などの寄稿があり、
貴重な初演時の舞台写真も掲載されていて見ごたえがある。
価格は3,500円。

詳しくは下記公式ページでご確認いただきたい。

別役実フェスティバル パスポート

(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ)

公式サイト Youtubeで観る

Facebookで共有  Twitterで共有  Google+で共有  


 

 


公演情報
別役実フェスティバル

2015年3月~2016年7月

【参加団体】
北九州芸術劇場/新宿サニーサイドシアター/LAVINIA/劇団青年座
劇団俳協/Pカンパニー/劇団俳優座/劇団民藝/劇団キンダースペース
名取事務所/兵庫県立ピッコロ劇団/劇団銅鑼/文学座/テアトル・エコー
山の羊舎/演劇集団円/劇団昴 ザ・サード・ステージ/新国立劇場


タグ


[ad#ad-1]


最近の記事

『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』 撮影:田中亜紀
虚飾の城の裸の王様のものがたり『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』観劇レビュー
6
公演中 11月23日(水) 〜 12月11日(日)
『ルーシーフェス/大盤振舞』
楽劇座10周年記念公演をオンラインで開催! 公演映像2本+生配信6回の『ルーシーフェス/大盤振舞』12月10日から1ヶ月にわたり開催
12
公演日程 12月10日(土) 〜 01月10日(火)
お座敷コブラ『TRIANGLE』
チームTartaglia 出演者インタビュー 『非対面芝居』がさらに進化! 濃密な会話サスペンス リモート取材の裏に隠された17年前の未解決事件。衝撃のラストは必見! お座敷コブラ『TRIANGLE』2022年11月30日から溝ノ口劇場で上演
37
本日初日 11月30日(水) 〜 12月04日(日)
劇団B-Stage『どうか私と黄泉の果てまで』
劇団B-Stageが初のオリジナル作品に挑戦! 舞台『どうか私と黄泉の果てまで』12月9日(金)~11日(日)に北翔大学札幌円山キャンパス多目的ホールにて上演
5
公演日程 12月09日(金) 〜 12月11日(日)
ゲキ×シネ「神州無頼街」ポスター
【予告編動画あり】福士蒼汰・宮野真守の最強バディに映画館でまた会える! ゲキ×シネ『神州無頼街』2023年1月13日から全国上映
86
公演日程 01月13日(金) 〜 (木)
音楽劇『ジェイド・バイン』
アンドロイドの世界、人間の熱で今伝えたいメッセージ 音楽劇『ジェイド・バイン』観劇レビュー
24
公演終了 11月17日(木) 〜 11月23日(水)
made by nakice
モノと生息し、身体を含む物質が持つ現象と形跡を表出させる nakice『ABITA@京都芸術センター』12月16日~18日に開催
9
公演日程 12月16日(金) 〜 12月18日(日)
令和座 第5回公演『バビロンに死す』
劇場の区域一帯までを作品の背景に仕立てようと画策する 令和座 第5回公演『バビロンに死す』12月7日(水)からシアターバビロンの流れのほとりにて で上演
21
もうすぐ 12月07日(水) 〜 12月11日(日)
T-works#5『三文姉妹』左から久馬歩、丹下真寿美
【動画7分】そわそわしてドキドキする展開に期待大! 丹下真寿美と久馬歩インタビュー T-works #5『三文姉妹』2023年1月24日から東京・愛知・大阪・福岡で上演
11
公演日程 01月24日(火) 〜 02月23日(木)
劇団チャリT企画『アベベのベ2』
風刺か? 冒涜か? 4者にムチ打つ茶番コメディ! 劇団チャリT企画『アベベのベ 2』11月30日(水)から東京・下北沢・駅前劇場で上演
10
本日初日 11月30日(水) 〜 12月04日(日)
製作委員会第13回公演 『メイン通りの妖怪』
60代からの「自分との折り合いのつけ方」をテーマにしたコメディ 製作委員会 第13回公演 『メイン通りの妖怪』12月2日から新宿シアター・ミラクル、12月8日に座・高円寺2にて上演
9
もうすぐ 12月02日(金) 〜 12月08日(木)
『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』
【動画2分】中川大志が昭和歌謡版リチャード三世を縦横無尽に演じる! 音楽劇『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』が明治座で開幕/東京公演は11月30日まで
27
公演中 11月06日(日) 〜 12月25日(日)
受け継がれる物語 2グループの成長の過程 舞台『少年たち あの空を見上げて』観劇レビュー
2
公演終了 09月11日(日) 〜 11月06日(日)
ミュージカル『ルートヴィヒ~Beethoven The Piano~』
静寂の中で聞こえた、苦悩と希望。中村倫也主演 ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』観劇レビュー
285
千穐楽 10月29日(土) 〜 11月30日(水)
MousePiece-ree『あの日あの時の、嘘』
MousePiece-reeがメンバー3人だけで挑む「6人芝居」?!それぞれが男女二役を演じて、かつ異なる視点で2バージョン上演!インディペンデントシアター1stにて11月13日まで!
8
公演終了 11月03日(木) 〜 11月13日(日)
村井秀清の音楽を味わいながら旅人気分に『世界ふれあい街歩き フィルムコンサート』上演中
4
公演終了 11月03日(木) 〜 11月04日(金)
左から戸次重幸、竹財輝之助
戸次重幸、竹財輝之助がナビゲーターとして出演 NHK『世界ふれあい街歩きフィルムコンサートvol.2』いよいよ11月3日(木・祝)、4日(金)に有楽町・ヒューリックホール東京で上演
22
公演終了 11月03日(木) 〜 11月04日(金)
ノサカラボ 『罠』
誰もが飲み込まれる舞台 ノサカラボ 『罠』の世界観/大阪公演が開幕
14
公演終了 10月22日(土) 〜 11月03日(木)
犬儒派リーディングアクト『犬の舌』
犬儒派リーディングアクトのクリスマス特別興行 朗読公演『犬の舌』12月24日・25日にアトリエ三軒茶屋で上演
14
公演日程 12月24日(土) 〜 12月25日(日)
SHINKANSEN☆RX『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』 撮影:田中亜紀
古田新太・天海祐希らが出演の新感線☆RX『薔薇とサムライ2−海賊女王の帰還−』東京公演が開幕/11月26日にはライブビューイングが開催
62
公演中 09月09日(金) 〜 12月06日(火)
演劇ユニット黒虹サンゴ『優しさ、その先、或いは手前』
「優しい嘘」と「距離感」を描いた会話劇 演劇ユニット黒虹サンゴ『優しさ、その先、或いは手前』12月1日からコフレリオ新宿シアターで上演
14
もうすぐ 12月01日(木) 〜 12月05日(月)
堀越涼(あやめ十八番)脚本・演出 舞台『沈丁花』 堀越涼・山田真歩・松島庄汰・大沢健インタビュー
堀越涼(あやめ十八番)脚本・演出 舞台『沈丁花』 堀越涼・山田真歩・松島庄汰・大沢健インタビュー
63
公演日程 12月16日(金) 〜 12月20日(火)
望海風斗『Look at Me』 撮影:岩田えり
望海風斗がノンストップで歌い踊る90分間 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』観劇レビュー
58
公演終了 10月27日(木) 〜 11月24日(木)
『妖精大図鑑ASAKUSA THUNDER GATE』
浅草×宇宙×推し 遠い遠い星から地球という観光地にやってくる女の子の物語 妖精大図鑑『ASAKUSA THUNDER GATE』11月25日から浅草九劇で上演
8
公演終了 11月25日(金) 〜 11月27日(日)
劇団美咲帝國の旗揚げ公演『はいびすかす ─ 珈琲城 ─alternative』
平均年齢20.5歳!若手カンパニー劇団美咲帝國の旗揚げ公演『はいびすかす ─ 珈琲城 ─alternative』12月3日、4日に三崎商店街内の雑貨屋 HAPPENINGで上演
9
もうすぐ 12月03日(土) 〜 12月04日(日)
ゲキ×シネ『神州無頼街』
【特報動画あり】福士蒼汰・宮野真守の最強バディがスクリーンに帰ってくる! ゲキ×シネ『神州無頼街』2023年1月13日から上映開始/夏にはBlu-rayが発売
51
公演日程 01月13日(金) 〜 (木)
デザイン:橋本匡市(万博設計)
MousePiece-ree20周年記念興行第二弾はメンバー三人だけで挑む10日間のプチロングラン公演/11月3日~13日 大阪・日本橋のインディペンデントシアター1stにて上演
6
公演終了 11月03日(木) 〜 11月13日(日)
令和座第4回公演『クリエイター偏差値35』
脚本家同士の価値観がぶつかり合う! 令和座第4回公演『クリエイター偏差値35』がAPOCシアターで開幕/上演は23日(日)まで
30
公演終了 10月19日(水) 〜 10月23日(日)
第11回公演「頭なら前からおかしい」2021年10月インディペンデントシアター2ndにて
TheStoneAgeヘンドリックス『ふにゃふにゃ、夕立、夏霞』10月28日〜30日インディペンデントシアター2ndにて開催
6
公演終了 10月28日(金) 〜 10月30日(日)
ミュージカル『エリザベート』
【動画3分】ミュージカル『エリザベート』が帝国劇場で開幕/東京公演後は愛知・大阪・福岡で上演
329
公演中 10月09日(日) 〜 01月31日(火)

 ≫もっと見る
 

編集部ピックアップ!

エントレがおすすめする他の舞台



Copyright 2022 Village Inc.