2015.3.19  128

不条理劇とは・・・。 別役実 本人が語った「演劇」をつくる意味


別役実

 
別役実フェスティバルの記者会見が行われ、
劇作家の別役実、演出家の鵜山仁、俳優の林次樹が登壇した。

 
別役実フェスティバルは18団体が参加し、
約1年半に渡って別役作品を上演するというフェスティバル。
文学座、青年座、円、昴などの老舗新劇劇団が
ゆるやかに連携して開催するという珍しい試みだ。

このフェスティバルの記者会見に、
別役実氏本人も参加。
フェスティバルへ期待することや、自身の新作の事、
さらには「不条理劇」について、そもそも「演劇」についてまで語られた。

以下は記者会見のレポート。動画はページ下に掲載した。

 
フェスティバルを開催することになった経緯は?

鵜山仁

鵜山「僕は高校時代から別役さんに憧れていて
もうかれこれ50年近くになるんですけど、
だけど現場では ほぼ別役作品と関わる機会が無くて
なんとか別役さんと同時代を共有したいと。

この際、文学座に所属している僕が昴で演出させて頂くということもあるんですけど、
劇団、集団がゆるやかに横につながって
小さな空間がささやかに連携できればと思って。

18団体、19演目、約1年半、
フェスティバルをゆるやかにやっていこうと思っています。」

別役実

 
別役「子供時代から病気したこと無かったんですけども、
ここへきて突然 パーキンソン病という得体の知れない病気にかかりまして、
初めての大病だったんで、我ながらビックリして
かなりショックだったんですね。

で、退院してきたらこの話を伺いまして、
僕の芝居を並べてやってくださるという話で、
大変勇気づけられまして。

これが無かったら、もしかしたら推理小説でも
書いて過ごそうかという感じがあったんですけども、
でも、芝居やる気になったんですからね。」

 
今回のラインナップについて

街と飛行船

別役「街と飛行船」なんていうのは今回が初めてじゃないかと思うんですが
それ以外はだいたい良くやられている脚本で、
初期の悲劇的なものじゃなくて、わりと喜劇的なものが多くなっているなんてのは
だいたい感じ取れまして、
まあそれは、今日的な傾向じゃないかと感じ取れます。

テーマとかそういう難しい事じゃなくて、
芝居の感触みたいなものが 軽いか、重いかという感覚で言えば、
まあちょうどいい軽さなんじゃないかなと。」

 
執筆中の新作について

別役「尼崎事件を材料に取った『あの子はだあれ、だれでしょね』というのが
タイトルになっているんですけども。

柳田国男の『妹の力』のテーマを頂いて、
女性が巫女として男性社会の中で主導権を取って犯罪を起こすという、
まあ古くからあるテーマですけども、
それに照らしあわせて、あの事件を展開してみようと。」

 
このフェスティバルに期待することは?

別役「僕の芝居は大変気の毒なんだけど、なかなかお金にならないんですよね。
小劇場でやる芝居が多いですし、だから経済的に大変苦労されるんじゃないかと思うんです。

ただ僕は、芝居っていうのは200人くらいの小屋でやるのが
正当な芝居だという風に考えてるんで、
小劇場の芝居がですね、少しでも定着するようになって、
それに対する刺激になればうれしいと思っていますね。

大変でしょうけども、そういうふうな形で
芝居の一番のすそ野を広げて頂ければいいんじゃないかと考えております。」

 
不条理劇について

鵜山仁、別役実

別役「僕は不条理劇の作家と言われているんですけども、
最近は不条理ということをさほど考えないというのがありまして、
60年代のベケットやイヨネスコが我が国に紹介されていた当時は
不条理であることが一つの主張であったり、反逆であったりといった
要素があったんですが、
70年代、80年代を経て、そういう要素は無くなってきたんですね。

若い人たちの脚本を読むと、
不条理であることが自然に入り込んできているというのがありますね。
まあ、そういう意味から言えば、
不条理というのは、ある程度の役割を果たしつつあるんじゃないかと、
今は考えております。」

 
演劇について

別役「演劇そのものの形式がですね、
僕は反社会的だっていう感じがするんですよ。

観客の集め方だとしても、
1回200人だけにしか見せられないというのが
芸術というものが持っている限界という構成を
如実に表しているという感じがするんです。

ですから映画だとかテレビだとかで
100万人にコピーして見せるのが消費財だとすれば
演劇・舞台というのは、
むしろ消費できないことに有効性を見出すメディアになっていると思うんですね。

それから伝達の方法も、
コピーして100万人にいっぺんに見せるんじゃなくて、
1回1回50人ずつの、あるいは200人ずつの観客に見せて
それが波状攻撃のように伝播していく。
伝播していくことによって伝わっていく。

この形式を持つことによって、
演劇というのは消費財じゃなくて、
蓄積される文化財になっているんだと思うんですね。」

 
別役実フェスティバル

別役「それから表現の仕方もですね、
電気の力によって拡大するのではなくて、
等身大の人間が機械によらない声、音声、しぐさによって
伝達しうるものを伝達する、という伝達の仕方も
反近代だという感じがするんですね。

近代が作った合理性とか拡大性とかを排除しているという感じがするんですね。

そうすると、演劇が持っているあらゆる表現の方法にしろ伝播の仕方にしろ
そういうものが全て反近代で反逆的だと考えて、
演劇を浸透させることによって、
現代が陥っている無味乾燥性というか、非人間性とかですね、
そういうものを解消できる手立てになっているんじゃないかと
そういう風に考えてるんですけどね。」

 
別役作品の魅力とは?

鵜山仁

鵜山「僕は、先程別役さんがおっしゃった
【別役さんの芝居はお金が儲からない】という所に興味がかなりあって。

話はずれちゃうんですけど、
このフェスティバルの話を持ちかけると、
みなさん、ややほっこりした顔をするというか、
やや含羞をはらんでほほえんでくれるというか
これで金儲けをしようと思わないというか、そういう発想にならないという
面白いところがあって。

言ってみれば無償性の演劇というか
引用しちゃいますけど、【消費される事を拒む】というか。
別役作品のそういう体質に興味があったということですかね。」

 
林次樹
 

「僕は30年・・・いや、もっと前に別役さんの芝居を観ていて
やりたくなって、この世界に入ってしまったようなところがあって。

お亡くなりになりましたが、木山事務所の木山さんが別役さんの作品を
大変たくさんやられていて、
その木山さんが『別役さんは天才だからね。別役さんの脚本はわからないよ』
というふうに言っていて、僕もそう思っていて、
僕らが解釈なんかきちんとできるわけないんです。

だからこそ逆に、作る集団や演出家の考えによって
いろいろな解釈ができる奥深さとか懐の深さみたいなものがあって。

本当は別役さんの中にひとつの答えがあるのかもしれませんが、
僕ら凡人はああでもない、こうでもないと探しながら
答えのない旅を続けられることが魅力で、ずっと続けているのではないか。

演劇を続けてやめるまで同じことだと思うんですが、
だから別役さんの作品を続けているんじゃないかと思うんです。」

 
別役さんが今後やりたいことは?

別役実

別役「平常心。平常心ということと、戯曲を書くということは
あまり並び立たないんですよね。
年をとった場合にどういう戯曲を書くべきかについて
平常心で戯曲を書くことができるかどうかということを
確かめたいという感じはありますね。

戯曲をやめてエッセイを書くんだとすればですね、
平常心でも書けるわけなんですけども
平常心で芝居を成立させることができるかどうかということを
わりと考えています。

だから、そういうふうに芝居が向いていく可能性は
あるんじゃないかと思います。」

 
消費される事を拒むメディア「演劇」というくだりが
とても印象的で、素敵な表現だと感じたがいかがだっただろうか。

現在執筆中の新作も気になるところだが、
さっそく3月21日(土)から上演が始まるので
別役実の書いたものに興味が湧いてきた方は公式サイトで
スケジュールをチェックしてみてほしい。

別役実フェスティバル 公式サイト

 
別役的宇宙をめぐる スタンプラリー付きパスポート

別役実フェスティバル パスポート

このフェスティバルの特別企画として
別役実フェスティバル パスポート が公式サイトで販売されている。

小冊子「別役実の軌跡」と、スタンプラリー用の台紙のセット。
観劇の際にパスポートを提示すると観劇料金の割引や記念品がもらえる。
また、スタンプがたまれば交流プロジェクトへ無料で参加できるなどの特典もある。

小冊子には鵜山仁、野田秀樹などの寄稿があり、
貴重な初演時の舞台写真も掲載されていて見ごたえがある。
価格は3,500円。

詳しくは下記公式ページでご確認いただきたい。

別役実フェスティバル パスポート

(撮影・編集・文:森脇孝/エントレ)

公式サイト Youtubeで観る

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公演情報
別役実フェスティバル

2015年3月~2016年7月

【参加団体】
北九州芸術劇場/新宿サニーサイドシアター/LAVINIA/劇団青年座
劇団俳協/Pカンパニー/劇団俳優座/劇団民藝/劇団キンダースペース
名取事務所/兵庫県立ピッコロ劇団/劇団銅鑼/文学座/テアトル・エコー
山の羊舎/演劇集団円/劇団昴 ザ・サード・ステージ/新国立劇場


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